順天堂医学
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原著
医療における在宅ホスピスケアシステムの構想
--訪問看護ステーションの位置づけと役割--
杉本 正子
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1998 年 44 巻 3 号 p. 271-285

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抄録

目的: 全国訪問看護ステーションの在宅ホスピスケアの現状を把握し, 在宅ホスピスケアを推進していく上での医療制度全体における訪問看護ステーションの位置づけと役割について考察することを目的とした. 対象と方法: 全国の訪問看護ステーション1485所の所長へ質問紙調査, 5人の医師を対象に聞き取り調査を実施した. 結果: 在宅ホスピスケアは約7割のステーションが実施していると答え, 関わった患者は年平均13.7人, 在宅で看取った患者はわずか3.2人であった. 在宅ホスピスケアの経験のある看護婦のいるステーションでは在宅ホスピスケアの実施率が高かった. また現在在宅ホスピスケアを実施していないステーションも在宅ホスピスケアへの関心が強かった. ステーションが考える在宅ホスピスケアの実施と実際に在宅ホスピスケアを実施している開業医の考える実施にはズレがみられ, ステーションの実質的な24時間対応の必要性が示唆された. 在宅ホスピスケアの発展には, 病院や開業医など医師との連携が大切であり, このためには医師や看護婦への在宅ホスピスケア教育, 行政や病院そして地域にあるホスピスなどのバックアップが必要である. また一方で一般住民への在宅ホスピスケアへの普及・周知も重要である. 結論: ステーションが末期がん患者に対して24時間体制で臨み, 医師らの協力があればステーションが在宅ホスピスケアの要になることは十分に可能である. 在宅ホスピスケアの普及や医師・看護婦, 住民への教育に行政がバックアップし, 病院や地域のホスピスがより地域に開放できる部分を提示できれば, わが国の医療システムの中で在宅ホスピスケアは現状から飛躍的に進むと考える.

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© 1998 順天堂医学会
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