順天堂医学
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原著
寝たきり予防におけるかかりつけ医機能と役割
-アンケートと訪問調査から-
若松 弘之
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1999 年 44 巻 4 号 p. 434-447

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抄録

目的: 寝たきり予防におけるかかりつけ医機能と役割について検討し, 寝たきり予防への具体的な方向を求めることを目的とした. 対象: (1) 都内某区にて『かかりつけ医機能推進事業』に登録している医師133名全員をアンケート調査の対象とした. (2) 訪問調査ではカルテ調査で抽出した97名のうち, 寝たきりになった当時に区内診療所の医師を受診していた者が19名おり, 彼らのその当時の主治医15名を対象とした. 方法: (1) アンケート調査では郵送法にて実施した. (2) 訪問調査に際しては, まず寝たきり老人 (厚生省作成の障害老人の日常生活自立度判定基準ランクB・C) をカルテから抽出し, その症例が寝たきりになった時期の主治医を特定した. このうち, 協力が得られた区内診療所医師に対し, 訪問して対面聞き取り調査した. 結果: (1) アンケートは133名中80名から回答 (回収率60%) を得た. 調査期間中に在宅で寝たきり患者を受け持っているとの回答が53名 (68%) あった. そのうち2週に1回以上往診をしていると回答した者が46名あり, 46名のうち70歳以上が18名 (39%) であった. かかりつけ医が結びつけた社会資源のサービス内容別では, ヘルパー派遣・訪問看護・機能訓練事業が多く, 職種や機関では保健婦やケースワーカー・訪問看護ステーションが多かった. (2) 訪問看護ステーションと保健福祉センターから抽出した97名の寝たきり老人において, 現在, 在宅で診てもらっているのは約79%が診療所であるが, 寝たきりになる前ないし, 寝たきりになった当時に診てもらっていたのは約78%が病院であった. 結論: 寝たきり予防におけるかかりつけ医機能として, 普段からの健康管理機能に加え寝たきりの恐れが高いと予測したときに在宅福祉サービス, といった社会資源への紹介を通して地域医療と地域保健福祉を結びつけることが挙げられる. さらに, 寝たきり予防に向けた積極的な病診連携への取り組みが, 都市部でのかかりつけ医機能ないし役割として求められていくと思われる.

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© 1999 順天堂医学会
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