順天堂医学
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原著
未婚女性の結婚・出産に対する阻害要因
-結婚・出産・育児・介護および就業に関する意識調査から-
彭 潤希佐藤 龍三郎武藤 孝司
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キーワード: 結婚, 出産, 育児, 親との同居, 介護
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1999 年 44 巻 4 号 p. 423-433

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抄録

目的: 本研究では, 意識調査をもとに未婚女性の結婚に関する阻害要因を探り, その背景要因との関連を明らかにすることを目的とした. 対象: 調査に協力の得られた東京都内にある大学・専修学校5校と事業所5ヵ所に在籍する18歳以上35歳までの未婚女性859人を対象者とし, 回答の得られた666人 (77.5%) について解析した. 方法: 学校・事業所の担当者を通して調査票を配布し, 調査対象者が自ら記入した後, 自ら封入して, 郵送にて回収する形式で調査を行った. 本研究では結婚の障害になると思われる条件として, (1) 「家事の大半を自分がする」 (2) 「結婚したら仕事をやめる」 (3) 「出産・育児のために仕事をやめる」 (4) 「夫の親と同居する」 (5) 「夫の親を介護する」という5つを設け, クロス集計およびχ2検定を行った. 解析には統計パッケージSASを用いた. 結果: 1) 5つの条件のうち (4) と (5) が, 大いに結婚の障害になると意識する者の割合が最も高かった. また勤労者と学生の間で, 大いに結婚の障害になると意識する者の割合に差がみられた条件は, (2) (3) (5) であった. 特に条件 (5) は, 勤労者で結婚の障害になると意識する者の割合が高かった. 2) 年齢別の解析の結果, 年齢が高いほど上記5つの条件すべてにおいて, 大いに結婚の障害になると意識する者の割合が高かった. 特に比較的高年齢の勤労者において, 上記の5条件が結婚に対する障害になっていると意識する者の割合が顕著に高かった. 3) 上記の条件 (2), (3) については, 学生の母親のライフコースとの関連が, 条件 (4), (5) については, 勤労者の母親のライフコースとの関連が示唆された. 結論: 1) 夫の親の介護問題は, とりわけ比較的高年齢の勤労者において結婚の妨げとなる重大な要因の一つと考えられた. 2) 年齢の高い未婚者ほど, 家事の負担, 仕事の中断, 相手の親との同居, 相手の親の介護を結婚に対する障害として意識する者の割合が高かった. 3) 母親のライフコースは, 学生の場合, 結婚・出産による一時退職を結婚への障害と感じる意識の一因となっている可能性が, また勤労者の場合, 夫の親の介護を結婚への障害と感じる意識の一因となっている可能性が示唆された.

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© 1999 順天堂医学会
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