抄録
目的: 膵内分泌腫瘍に見出される腺管構造の意義について, 正常膵組織の膵管構造を踏まえて検討する.
対象: 順天堂医院および関連施設で外科的に切除された膵内分泌腫瘍30例と肝胆膵疾患のない50例の剖検膵組織を対象とした.
方法: 組織片は内分泌腫瘍より1-3個, 剖検膵では頭部・体部・尾部より1個ずつ切り出し, HE染色・EVG染色を行った. 腫瘍内腺管ならびに剖検例の膵管の長径・短径を測定し, 後者では周囲の弾性線維の厚さも併せ光学顕微鏡下40倍で10視野以上で行った. また, 膵島と膵管との連続性についても調べた. さらに腺管・膵管に対し, CA19-9・リパーゼ・NSEおよびCarboni canhydrase-IIの免疫組織化学を行った. 結果: 1) 膵内分泌腫瘍30例中9例において, 腫瘍内に腺管がみられた. 腺管は9例全例がCA19-9・CA-IIに陽性, リパーゼも9例中7例が陽性であった. 9例中7例の腺管は, 腫瘍細胞と連続性があり, その6例では周囲を弾性線維で囲まれなかった. 一方, 9例中5例の腺管では腫瘍細胞と連続性がなく, いずれも弾性線維で囲まれていた. 2) 剖検例の80μm以下の膵管では, 弾性線維が50.8%に存在しなかった. 膵管の長径・短径と弾性線維の厚さの間には相関係数0.745・0.707と強い相関関係がみられた. 膵島と膵管との連続性は50例中8例 (16%) にみられた.
結語: 膵内分泌腫瘍の腺管構造の中で, 弾性線維が腺管周囲に存在するものは既存の膵管で, 弾性線維が存在せず, かつ腫瘍細胞と連続性がみられるものは新生の腺管で, 腫瘍細胞からの分化と考えられた.