順天堂医学
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原著
根治不能消化器癌患者への段階的告知
--告知後の患者と家族の心理--
卜部 元道新井 平伊広沢 正孝鎌野 俊紀鶴丸 昌彦関根 正幸安藤 隆夫岩崎 良三
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2001 年 46 巻 3 号 p. 344-352

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抄録
目的: 根治不能癌患者への緩和医療を行うに当って, がん告知は必須の事柄である. しかし, 患者への精神的衝撃を最小限にして, いかに患者と家族, それと医療者との三者の関係を良好に保つかがチーム医療を行う上で最大の課題と考え, これを解決する糸口を探ることをめざした. 対象・方法: 筆者らが担当した根治不能消化器癌患者9名に対し, まず患者自身に『病状説明に関する意識調査』を初診時に行った. 以後, 新井の7段階告知様式を用いて段階的に告知し, 患者と家族の心理の推移を考察した. 結果: 患者が自分の病名, 病状について告知を強く希望しており, 家族の心理も患者自身の希望を尊重する心理が明らかとなった. 根治不能癌患者に対する緩和医療を行う際, 病状の進行に伴って複数回の告知, インフォームド・コンセントを行う必要があった. これに際して, 段階的に告知レベルの内容を高めた結果, そのつど患者の心理の変化を知り, 希望する医療内容を選択できた. このことが患者と家族の関係を良好に維持できたことから, 家族の心理も, ほぼ高い満足度を得たと考えられた. 結論: 段階的告知はがん患者の心理の変化を的確に知ることができる. このことを正確に把握して, 患者の希望に応じた良いチーム医療を行えるよう配慮したい.
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© 2001 順天堂医学会
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