2022 年 78 巻 7 号 p. III_233-III_240
近年,流域の都市化が見られる茨城県南部の牛久沼において,牛久沼ならびに流入河川の水質と,牛久沼の植物プランクトンの変化を明らかにし,近年の牛久沼におけるCODの変動要因について考察した.その結果,牛久沼のCODは減少傾向であったが,TN,TPは横ばいであった.流入河川のCOD,TNならびにTPの3河川平均濃度はいずれも減少し,これは都市化に伴う田畑の減少や下水道の整備の影響と考えられた.牛久沼のCODと,流入河川のCOD,TN,TPがともに減少していたことから,流入河川の水質の向上が牛久沼におけるCOD減少の原因の一端を担っていたと推察された.一方で,牛久沼ではp-CODが占める割合が相対的に高く,CODとクロロフィル量とがよく一致していたことから,牛久沼のCOD変動に対しては,植物プランクトンを主とする内部生産の影響が大きいと示された.植物プランクトンは,ほとんどの時期にりんによって制限されていると示唆されたことから,牛久沼の水質変動を把握するためには,りん負荷量ならびに,底泥からのりん回帰フラックスを注視する必要がある.