順天堂医学
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特集 病院におけるリスクマネジメント(医療安全対策)の取り組み
順天堂医院におけるリスクマネジメント体制
--実践的リスクマネジメント体制確立のための基本的コンセプト--
梁井 皎清宮 正嗣
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2002 年 47 巻 4 号 p. 444-452

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抄録

近年, 患者の高齢化・各種高度医療機器の増加・在院日数の短縮などから, 高度の医療を担っている医療施設ほど組織的にリスクマネジメント体制を構築することが必要となっている. 永い歴史を持つ順天堂医院ではずっと以前から高度の医療と患者の安全・サービスを理念として診療を行ってきた. また, 平成5年12月に特定機能病院第1号として承認され, また, 平成12年4月から医療安全対策室を発足させて実践的なリスクマネジメント体制の構築をはかってきた. 実践的リスクマネジメント体制確立のための基本的コンセプトとしてあげられるのは, 先ずは病院トップがリスクマネジメント体制確立の必要性を強く認識し, 強い権限を与え得るゼネラルリスクマネジャーを任命するところから始まる. 次に, ゼネラルリスクマネジャーは単なる形だけのリスクマネジメント体制を整えるのではなく, 職員全員が医療安全対策意識を高めて活動できる様な体制を立案し指導する. 順天堂医院では医療安全管理委員会の他に14の各種リスクマネジメント小委員会を設置し, 各種報告書の分析などで現場職員自らが活動し, さらに各種安全対策を現場にフィードバック出来る態勢をとっている. 各種リスクマネジメント小委員会が各種報告書の分析を的確に行い得るように, 14委員会の分け方はインシデント内容別になっていて, さらにこれらの小委員会は委員が各部署から公平に集まって構成されている. 事故は現場で起こるため, 立案した各種安全対策が現場にフィードバックされない様なリスクマネジメント体制では全く意味をなさない. また, 従来の組織の中に新しい組織としてのリスクマネジメント体制を組み込むに際しては, ITを活用したnetworkを一挙に院内に張り巡らしてしまう形を取ることがポイントである. リスクマネジメント体制は継続的に行われなければならないが, その継続的活動の中心となるのが, いったん作成された事故防止対策マニュアルの内容を毎年継続的に改訂する活動である. すなわち現場の職員各人が事故防止対策マニュアルの担当部分を繰り返し確認し, 大なり小なりの事故が起こる度にマニュアルの確認・修正を行うことによって, より完成された事故防止対策マニュアルができあがり, 医療事故の減少につながる. 実際, 当院においても大きな事故はもとより小さな事故も減少の傾向にある.

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© 2002 順天堂医学会
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