順天堂医学
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原著
全身性エリテマトーデスにおける網脈絡膜症の発症機構の検討
-(NZB×NZW) F1マウスを用いた解析-
中山 玲慧横山 利幸平塚 義宗中村 淳夫広瀬 幸子白井 俊一
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2002 年 47 巻 4 号 p. 519-527

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抄録

全身性エリテマトーデス (SLE) に合併する網脈絡膜症の病態を解析する目的で, 代表的SLE自然発症モデル系である (NZB×NZW) F1 (B/W F1) マウスの加齢に伴う眼底変化の検索, およびその網脈絡膜病変の病理組織学的, および免疫組織学的解析を行った. B/WF1マウスには, 加齢に伴いIgGクラスの抗DNA抗体を含む各種の自己抗体産生と, これに相関した免疫複合体の沈着によるループス腎炎が自然発症し, その病態はヒトSLEに極めて類似している. 従って, SLEの病因解明を目的に, 従来より広く研究に用いられてきた. 今回の解析の結果, 検眼鏡的眼底所見では, 網膜静脈の拡張および動脈の狭細化が著明で, 眼底後極部を中心に網膜下に白斑が出現し, その白斑は時間経過とともに数・大きさ・範囲ともに増大し, 滲出性網膜剥離にまで進展するものも認められた. 検眼鏡による異常の出現時期は, 蛋白尿の出現を指標としたループス腎炎の発症時期よりも約4ヵ月も早く, 2ヵ月齢で既に異常所見を呈するものが認められた. 網脈絡膜の病理学的所見では, 1) 色素上皮細胞の変性・菲薄化・脱落, 2) 脈絡膜毛細血管の拡張および閉塞と, 脈絡膜毛細血管板の肥厚, 3) 脈絡膜細小血管の内皮細胞の腫大と内腔の狭小化が認められた. 免疫組織学的所見では, 脈絡膜毛細血管閉塞部位に一致して, 免疫グロブリンおよびC3の沈着が認められた. これらの結果から, B/WF1マウスにはSLE網脈絡膜症 (SLE chorioretinopathy) 類似の病変が発症すること, その機序として, 脈絡膜毛細血管レベルにおける免疫複合体の沈着による脈絡膜循環障害による二次的な色素上皮障害が主な原因であることが示唆された.

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© 2002 順天堂医学会
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