順天堂医学
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原著
肝細胞癌および転移性肝癌におけるdihydropyrimidine dehydrogenase mRNA発現について
鈴木 貴久須郷 広之児島 邦明深澤 正樹別府 倫兄二川 俊二
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キーワード: 肝細胞癌, 転移性肝癌, DPD, 5-FU
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2002 年 48 巻 2 号 p. 233-242

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抄録
目的: 肝細胞癌および転移性肝癌症例のdihydropyrimidine dehydrogenase (DPD) mRNA発現について検討した. またDPDmRNA発現量とDPD活性値の相関関係について検討した. 対象: 肝細胞癌16例・転移性肝癌8例 (うち大腸癌7例・乳癌1例) を対象とした. 方法: DPDmRNA発現量をReal Time RT-PCR法にて, DPD活性をRadio enzymatic assayにて測定した. 結果: 肝癌の癌部・非癌部においてDPDmRNA発現量とDPD活性との間に有意な相関関係を認めた (癌部: p<0.0001・非癌部: p<0.01). 癌部と非癌部のDPDmRNA発現量の比較では, 肝細胞癌では有意差を認めなかったが, 転移性肝癌において非癌部で有意に高値を示した (p<0.01). また, 癌部のDPDmRNA発現量は肝細胞癌が転移性肝癌よりも高値であった (p<0.05) のに対し, 非癌部では転移性肝癌が肝細胞癌に比較しDPDmRNA発現量が高値であった (p<0.05). 各臨床病理学的因子との検討では, 非癌部のDPDmRNA発現量とICG-R15値との間に負の相関関係を認め (r=-0.559, p<0.01), 肝機能が低下するとDPDmRNA発現量が低下することが示唆された. 結論: 肝機能障害が高度で, 腫瘍のDPDmRNA発現量が高い症例では, 腫瘍内の5-FUの代謝が進み有効な腫瘍内濃度が維持されないうえ, 有害事象が強く出現する可能性がある. 肝癌組織のDPDmRNA発現量の測定は5-FU投与の適否の判断に有用であると考えられた.
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© 2002 順天堂医学会
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