抄録
目的: 連続携行式腹膜灌流 (CAPD) 療法の重大な合併症である腹膜硬化症に対するステロイドの効果を明らかにする目的で, デキサメサゾンのヒト腹膜中皮細胞 (HPMC) の増殖とコラーゲン産生能について検討を行った.
方法: ヒト大網よりHPMCを採取・培養した. Fetal calf serum (FCS) による刺激下での細胞増殖およびコラーゲン産生をデキサメサゾン (Dex) の添加・非添加の条件で検討した. 細胞増殖能は, modified methyltetrazolium assay (MTT法), 細胞周期はflow cytometry, collagen α (I) mRNA発現はnorthern blot, コラーゲン産生能はH3-proline incorporationを用いて検討した.
結果: HPMCの細胞増殖はDex濃度依存性に抑制され, さらにG1相に留めることが示された. I型コラーゲンのmRNA発現および蛋白産生も, 濃度依存性に抑制された. 結論: CAPD療法の合併症である硬化性腹膜炎の治療に, ステロイドの効果が期待される.