順天堂医学
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原著
2型糖尿病モデルマウス (KK/Taマウス) の糖尿病およびその関連形質に関与する遺伝子の検討
椎名 健二富野 康日己
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2005 年 51 巻 1 号 p. 50-56

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抄録
目的: KK/Taマウスは, 空腹時高血糖・耐糖能異常・高インスリン血症・肥満・高脂血症等を呈する2型糖尿病モデルマウスである. 最近, われわれはQTL解析を用いKK/Taマウスの種々の形質に関与する遺伝子座を報告した1) . 今回, GeneChipを用いKK/TaマウスおよびBALB/cマウスの肝臓におけるgene expression studyを行い, 糖尿病およびその関連形質に関与する候補遺伝子について検討した. 対象と方法: KK/Taマウスおよび対照であるBALB/cマウスの肝臓よりRNAを抽出, GeneChip (Affimetrix) を用い2群間における遺伝子発現の差異を検出した. 発現量の異なる遺伝子に関しては, RT-PCR法による確認, およびコーディング配列のシークエンスを行なった. また, 208匹のKK/Ta× (BALB/c×KK/Ta) F1退交配マウスを作製しSNPと種々の形質との関連性を検討した. 結果: GeneChipによりKK/Taマウスの肝臓でM-cadherinの強発現を認めた. RT-PCR法においても, KK/Taマウスの肝蔵, 骨格筋においてM-cadherinの強発現を確認した. M-cadherinのコーディング配列では, アミノ酸置換を伴う3個の一塩基多型 (SNP) を認めた. 退交配マウスを用いて, SNPと形質との関連性を検討したところ, M-cadherinはKK/Taマウスの血清トリグリセリド・血清インスリン・耐糖能・体重と有意な相関を認めた. 結論: M-cadherinはこれまで骨格筋の発生や発達に関与することが報告されていたが, 今回のKK/Taマウスによる検討では耐糖能異常・高インスリン血症・肥満・高トリグリセリド血症など, いわゆるメタボリックシンドローム発症の候補遺伝子となりうる可能性が示唆された.
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© 2005 順天堂医学会
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