順天堂医学
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原著
多系統萎縮症における体性感覚誘発電位の検討
--線条体黒質変性症およびオリーブ橋小脳萎縮症とパーキンソン病との比較--
呉 文剛林 明人三輪 英人水野 美邦
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2005 年 51 巻 1 号 p. 57-66

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抄録
目的: 多系統萎縮症multiple system atrophy (MSA) の一型である線条体黒質変性症striatonigral degeneration (SND) は早期にパーキンソニズムを呈し, パーキンソン病との鑑別を要する疾患である. 今回, われわれはMSAの中でSNDとオリーブ橋小脳萎縮症olivopontocerebellar atrophy (OPCA) を臨床および画像所見に加えて, 臨床生理学的所見, 特に体性感覚誘発電位somatosensory evoked potentials (SEP) に関連する側面を明らかにすることで, パーキンソン病Parkinson'sdisease (PD) との鑑別に役立つかどうか検討を行った. 対象: SND14例・OPCA9例・PD18例および他の神経疾患の対照群13例を対象とした. 方法: SND・OPCA・PDの3群を臨床・画像および臨床生理学的な側面から正中神経刺激によるSEPを中心に比較検討した. 結果: 臨床的には, 発症年齢はSND, OPCAおよびPD間に有意差は見られなかったが, Yahrの重症度分類の評価では重症度の進行の程度はSNDが最も速く, 次にOPCAであり, PDでは明らかに進行は遅かった. また, SNDではミオクローヌスの出現頻度がOPCAやPDよりも高い傾向がみられた. SEP検査にて, SNDでは臨床神経生理学的にはSEPの振幅が増大していた. SNDでミオクローヌスの認められた患者では巨大SEPのほかにC反射やJLA法 (jerk-locked back averaging法) でpremovement cortical spikeが検査した4例中3例にみられた. 結論: C反射やJLA法の結果から, SNDでみられるミオクローヌスは少なくとも一部には皮質反射性ミオクローヌスの機序で出現していることが推察された. 3疾患の鑑別診断において, SEPを中心とする臨床神経生理学的検査は3疾患の鑑別上有用と考えられた.
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© 2005 順天堂医学会
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