順天堂医学
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原著
IgA腎症におけるFc gamma (Fcγ) 受容体III遺伝子多型と組織学的重症度との関連性
田中 裕一鈴木 祐介柘植 俊直堀越 哲富野 康日己
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2005 年 51 巻 1 号 p. 75-82

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抄録
目的: Fcγ受容体は炎症性細胞の活性化・サイトカイン産生誘導, 免疫複合体 (IC) のクリアランスなどを介して免疫応答の調節に重要な役割を担っている. SLEにおいてFcγ受容体遺伝子多型はICのクリアランスなどを介して, その発症に影響すると考えられている. IgA腎症患者ではIgGの糸球体への沈着や血中IgA/IgG-ICの増加が観察され, 腎炎発症・進展との関連性が議論されている. その点で, IgA腎症におけるFcγ受容体の遺伝子多型と予後との関連性は大変興味深い. Fcγ受容体遺伝子多型とIgA腎症の疾患感受性や発症年齢, 血清免疫グロブリン値, 糸球体メサンギウム領域へのIgG沈着, 組織障害度との関連性を明らかにすることを目的とする. 対象と方法: 今回われわれは, IgA腎症患者124名, 健常人100名についてIgG親和性に影響するFcγ受容体IIIa (176VorF), IIIb (NA1orNA2) の遺伝子多型をPCR法にて解析し, 発症頻度・発症年齢・血清/糸球体IgG・IgA腎症の重症度などについて検討した. 結果: IgA腎症では, その発症頻度や血清IgG値や糸球体へのIgG沈着の程度に有意な相関は認めなかった. しかし, 糸球体メサンギウム細胞上に発現するFcγ受容体IIIa-176Vアリルをもつ群においては, 組織障害度が有意に高かった. Fcγ受容体IIIa遺伝子多型は, IgA腎症の組織の障害度と有意な相関を認めた. 176Vアリルは, 176Fアリルと比較してIgG1とIgG3との親和性が高い. 結論: 以上より, IgG (特にIgG1とIgG3) がFcγ受容体皿aを介して, IgA腎症の進展に重要な役割を担う可能性があると考えられた.
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© 2005 順天堂医学会
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