順天堂医学
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原著
血液透析患者における赤血球膜補体レセプター1 (E-CR1) の検討
--糖尿病性腎症と非糖尿病性腎症との比較--
若林 道郎大井 洋之玉野 まり子恩田 紀更前田 国見堀越 哲富野 康日己
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2005 年 51 巻 3 号 p. 334-343

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抄録
目的: 赤血球膜補体レセプター1 (E-CR1) は, 免疫複合体を処理するための肝や脾への輸送作用や補体制御因子としての役割を有しており, E-CR1発現量の低下は, 生体にとって不利な状態であると予想される. 血液透析患者のなかでも易感染性で合併症が多く, 予後不良な糖尿病性腎症患者におけるE-CR1の発現について, 非糖尿病性腎症患者との比較検討を行った. 対象と方法: 順天堂大学医学部附属順天堂医院および望星第一クリニック, 長岡第一クリニック, 裾野第一クリニックにおいて, 昭和50年から平成15年までの期間に週3回の外来維持血液透析を施行されていた糖尿病性腎症176名・非糖尿病性腎症101名の血液透析患者を対象とした. E-CR1およびDAF (decay accelerating factor), CD59について, それぞれモノクローナル抗体を用いフローサイトメトリーで発現量を測定した. また, 遺伝子多型の検討も行った. 糖尿病性腎症についてはE-CR1の発現量の多い群と少ない群に分けて, 臨床像の比較を行った. 結果: 糖尿病性腎症患者のE-CR1およびDAF, CD59の発現量は, 非糖尿病性腎症患者に比べ有意に低値であった (CR1, CD59: p<0.0001, DAF: p<0.01). しかし, 両者のE-CR1の遺伝子多型の割合には, 有意な差は認められなかった. しかし, 同じ遺伝子多型においてE-CR1の発現量を比較すると, 糖尿病性腎症患者は, 非糖尿病性腎症患者に比較し有意に低値を示した (p<0.0001). 糖尿病性腎症患者のE-CR1低値群の透析期間 (3.2±2.5年) は, 高値群 (1.8±2.5年) に比べ有意に長かった (P<0.013). 結論: 糖尿病性腎症による血液透析患者におけるE-CR1発現量の低下は, 生体防御のうえで不利な状態にあることが示された. このE-CR1の発現量の低下は, 遺伝的な要因によるよりも糖尿病性腎症による後天的な影響によると考えられた.
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© 2005 順天堂医学会
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