抄録
目的: 進行大腸癌に対する腹腔鏡下大腸切除術Laparoscopic assisted colectomy (LAC) の手術侵襲度を明らかにするために, 従来の開腹大腸切除術Open colectomy (OC) とretrospectiveに比較検討した.
対象: 左側進行大腸癌でD3郭清を施行した根治度A症例LAC 95例とOC 41例を対象に手術成績と術後臨床経過を比較した. そのうちLAC9例, OC8例で周術期の手術侵襲メディエーターを測定した.
方法: 臨床経過について術後疼痛, 消化管機能, 術後在院日数, 合併症を比較した. メディエーターについてG-CSF, 白血球, 顆粒球エラスターゼを術前, 術直後, 第1病日, 第3病日に測定し, その変動について比較検討を行った.
結果: 1. 術後臨床経過ではLACで疼痛が少なく, 消化管機能回復が早く (経口摂取開始: LAC: 3.0±2.8日vs OC: 5.8±1.6日, p<0.0001), 術後在院日数が有意に短かった (LAC: 15.8±6.8日vs OC: 26.5±7.2日, p<0.0001). 2. メディエーターの比較ではLAC群でG-CSFにおいて術後第1病日 (IAC: 29.3±11.8pg/ml vs OC: 99.0±77.8pg/ml, p=0.0154), 第3病日 (LAC: 14.8±3.5P9/ml vs OC: 33.2±7.8P9/ml, P=0.0005), 白血球数において術後第1病日 (LAC: 8300±2048/μl vs OC: 10440±968/, al, p=0.0161), 第3病日 (LAC: 7033±1177/μl vs OC: 8340±1490/μl, p=O. 0428), 穎粒球エラスターゼにおいて術後第1病日 (LAC: 91.2±25μg/l vs OC: 129.1±46μg/l, p=0.0486) の上昇が少なく, 早期に回復した.
結論: 術後臨床経過, メディエーター推移の比較により進行大腸癌においてもLACがOCと比べ低侵襲であることが示唆された.