1) 痴呆とは, 脳自体の病的変化によって, 一応発達した知的機能が, 持続的に社会生活に支障をきたす程度に低下した状態をいう. 2) 生理的老化は身体的老化の一つで, 誰にでもみられ, 日常生活に支障はないが, 痴呆は脳の病気により, 一部の人にみられ, 日常生活に支障をきたす. 3) 痴呆の症状は, 記憶の障害, 見当識の障害, 認知・行為・言語の障害, 判断・計算・抽象思考の障害, 意欲・感情・人格の障害, よりなる. 4) 記憶の障害は, 度忘れとは異なり, 新しい記憶から忘れ, 進むと古い記憶も忘れる. 身体で覚えた記憶は忘れにくい. 5) 見当識の障害は, 時間の見当識, 場所の見当識, 人物の見当識の障害よりなる. 6) 認知・行為・言語の障害は, 親しい人の顔が判らない失認, 服が正しく着られない失行, 適切な文章・単語がでない失語よりなる. 7) 判断・計算・抽象思考の障害は, 作業の間違いが多い, 家計簿の計算ができない, 想像力がなくなる, などよりなる. 8) 意欲・感情・人格の障害として, 自発性に乏しい, 怒りっぽい, 多幸的, などがある. 9) 痴呆に伴う精神症状・行動異常として, 抑うつ状態, 幻覚, 妄想, 興奮, 俳徊などがある. 10) 痴呆は年齢とともに増加し, 80歳を境に急激に増加する. アルツハイマー型痴呆が血管性痴呆より多い. 11) 軽度認知障害 (MCI) とは, 記憶障害を認めるが, 認知機能障害がそれ以外に及ばない状態をいう. 12) 高齢者のうつ病の特徴として, 抑うつ気分・精神運動抑制が目立たない, 不安・焦燥・心気・妄想が目立つ, などが挙げられる. 仮性痴呆は, 痴呆と間違われ易いが, うつ病の治療により改善するものをいう. 13) うつ病の痴呆への移行が報告されている, 器質性うつ状態として, 脳血管障害に伴ううつ状態と変性疾患に伴ううつ状態とがある.
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