順天堂医学
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51 巻, 3 号
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Contents
目次
特集 教授定年退職記念講演会
  • 中田 八洲郎
    2005 年 51 巻 3 号 p. 296-303
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    1990年代末にヒス束位図が臨床応用されるようになり, 頻脈性不整脈の発現機序の解明に飛躍的な進歩が見られ, 一方徐脈性不整脈においても, その伝導障害部位の診断がより詳細に行われるようになった. 著者はこれまで主として徐脈性不整脈を中心に研究を行ってきたが, その一端を列挙する. 房室ブロックはその伝道途絶部位により臨床像に差が見られ, 総体的にブロック部位が下位になるほど臨床的に重篤度が増す傾向がみられた. また高齢女性ではヒス束内ブロックが高頻度にみられた. 解剖学的な伝導系の概念は電気生理的にも説明可能であり, 剖検例による検討でも両者の所見はよく一致した. 治療面ではペースメーカーによる治療に関し, 洞機能不全症候群では長期に渡り心房ペーシングが可能であることを証明し, 房室ブロックにおいてはQRS幅と心機能に着目していたが, 最近この問題を解決するペースメーカーによる心臓再同期療法が開発され臨床的にもある程度の効果が認められた.
総説
  • 榎本 冬樹
    2005 年 51 巻 3 号 p. 304-310
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群はGuilleminaultらが1976年に「7時間睡眠中に10秒以上つづく無呼吸が30回以上見られるもの」, あるいは「non-REM睡眠1時間あたり5回以上認められるもの」を睡眠時無呼吸症候群と定義した. 睡眠時無呼吸症候群の分類として閉塞性・中枢性・混合性に分けられる. 中枢性SASはSAS全体の4%程度とされている. 大部分が閉塞性・混合性睡眠時無呼吸症候群である. 耳鼻咽喉科では主に閉塞性・混合性睡眠時無呼吸症候群に対して手術療法等を行っている. 閉塞部位より鼻性・上咽頭性・中咽頭性・下咽頭性・喉頭性・気管性に分けられる. 実際は鼻性・中咽頭性による閉塞が多く鼻中隔彎曲矯正術・下鼻甲介切除術・口蓋扁桃摘出術・口蓋垂軟口蓋咽頭形成術uvulo-palato-pharyngoplasty (UPPP), 舌正中部分切除がおこなわれ, 最重症例, 中枢性SASに対しては気管切開を施行している. このほか, 睡眠時無呼吸症候群は鼻アレルギー合併率が76%にものぼり, 鼻アレルギーの治療は睡眠時無呼吸症候群の治療にも有用である.
  • 田村 尚亮, 高橋 和久
    2005 年 51 巻 3 号 p. 311-321
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群 (SAS) は4型に分類されるが, 閉塞性睡眠無呼吸低呼吸症候群 (OS-AHS) の頻度が高い. 発見動悸は, いびきや昼間の眠気などの極めてありふれた症状であるため見過ごされやすい. 有病率は男性で高い (0.3-4%). 本症に見られる夜間の不規則な呼吸は, 終夜睡眠ポリグラフを用いて計測された無呼吸低呼吸指数 (AHI) によって評価され, AHI>5を異常と判定する. わが国の多くの施設では睡眠検査室を持たないため, 酸素飽和度測定を中心とした簡易検査が行われているが, 酸素飽和度低下指数 (ODI) はAHIと相関性が高く, スクリーニングとして有用である. こうした簡易検査によってであっても本症をできるだけ早期に発見し, nCPAP (経鼻的持続気道陽圧呼吸) などを用いた治療を行うことで, 疾患の背後に存在する睡眠や生活の質の低下を改善し, 交通災害などの社会生活に及ぼす悪影響や, 疾患の発症を回避することが重要である.
  • --心血管疾患との関連性--
    岩間 義孝, 代田 浩之
    2005 年 51 巻 3 号 p. 322-333
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群Sleep apnea syndrome (SAS) は, 心血管疾患の高い罹患率を有するため重大な社会問題として注目されている. 近年, SASと心血管疾患は併存疾患という認識から, SAS自体が心血管疾患の発症および進展に直接的に関与する機序が明らかになり, 心血管疾患に対する治療法の一つの選択肢としてSASを治療するという認識がもたれはじめた. SASには閉塞型 (OSA) と中枢型 (CSA) があり, OSA患者には高血圧症・冠動脈疾患・不整脈などの心血管疾患の合併率が高い. OSAを合併した高血圧患者は降圧剤治療に抵抗性を示すことが報告されており, 特に肥満症例で治療抵抗性の高血圧の場合, OSAの存在を考慮するべきである. 疫学的データなどからOSAが動脈硬化症と関連していることが示され, 冠動脈疾患には高頻度にOSAが合併し, それが冠動脈疾患の独立した予測因子であると報告されている. SASと冠動脈疾患はともに耐糖能異常・脂質代謝異常・高血圧・内臓脂肪増加などが重積したメタボリックシンドロームとの関連が示唆されている. OSAの動脈硬化進展の詳細な機序は不明であるが, SASによる炎症惹起, 内皮機能障害などが注目されている. 一方, 慢性心不全患者にはCSAの関与が報告されており, 酸素療法・経鼻的持続陽圧呼吸療法などが慢性心不全の非薬物療法として確立していくことが期待される. 標準的治療に反応が不良な心不全症例には, OSA, CSAの存在を疑うことが重要である. また, 不整脈においても, 徐脈性不整脈や心房細動とSASとの関連性が示唆され, CPAP治療が不整脈の予防・治療につながることが報告されている. 以上のようにSASが心血管疾患の発症・進展に深く関与していることが示され, 今後, 心血管疾患に及ぼす影響をより詳細に解明するための基礎的研究が必要である. さらに, 長期予後を検討するために心血管疾患を合併したSAS症例を対象とした大規模臨床試験の実施が必要である.
原著
  • --糖尿病性腎症と非糖尿病性腎症との比較--
    若林 道郎, 大井 洋之, 玉野 まり子, 恩田 紀更, 前田 国見, 堀越 哲, 富野 康日己
    2005 年 51 巻 3 号 p. 334-343
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 赤血球膜補体レセプター1 (E-CR1) は, 免疫複合体を処理するための肝や脾への輸送作用や補体制御因子としての役割を有しており, E-CR1発現量の低下は, 生体にとって不利な状態であると予想される. 血液透析患者のなかでも易感染性で合併症が多く, 予後不良な糖尿病性腎症患者におけるE-CR1の発現について, 非糖尿病性腎症患者との比較検討を行った. 対象と方法: 順天堂大学医学部附属順天堂医院および望星第一クリニック, 長岡第一クリニック, 裾野第一クリニックにおいて, 昭和50年から平成15年までの期間に週3回の外来維持血液透析を施行されていた糖尿病性腎症176名・非糖尿病性腎症101名の血液透析患者を対象とした. E-CR1およびDAF (decay accelerating factor), CD59について, それぞれモノクローナル抗体を用いフローサイトメトリーで発現量を測定した. また, 遺伝子多型の検討も行った. 糖尿病性腎症についてはE-CR1の発現量の多い群と少ない群に分けて, 臨床像の比較を行った. 結果: 糖尿病性腎症患者のE-CR1およびDAF, CD59の発現量は, 非糖尿病性腎症患者に比べ有意に低値であった (CR1, CD59: p<0.0001, DAF: p<0.01). しかし, 両者のE-CR1の遺伝子多型の割合には, 有意な差は認められなかった. しかし, 同じ遺伝子多型においてE-CR1の発現量を比較すると, 糖尿病性腎症患者は, 非糖尿病性腎症患者に比較し有意に低値を示した (p<0.0001). 糖尿病性腎症患者のE-CR1低値群の透析期間 (3.2±2.5年) は, 高値群 (1.8±2.5年) に比べ有意に長かった (P<0.013). 結論: 糖尿病性腎症による血液透析患者におけるE-CR1発現量の低下は, 生体防御のうえで不利な状態にあることが示された. このE-CR1の発現量の低下は, 遺伝的な要因によるよりも糖尿病性腎症による後天的な影響によると考えられた.
  • 吉川 征一郎, 木所 昭夫, 福永 正氣, 射場 敏明, 杉山 和義, 福永 哲, 永仮 邦彦, 須田 健
    2005 年 51 巻 3 号 p. 344-351
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 進行大腸癌に対する腹腔鏡下大腸切除術Laparoscopic assisted colectomy (LAC) の手術侵襲度を明らかにするために, 従来の開腹大腸切除術Open colectomy (OC) とretrospectiveに比較検討した. 対象: 左側進行大腸癌でD3郭清を施行した根治度A症例LAC 95例とOC 41例を対象に手術成績と術後臨床経過を比較した. そのうちLAC9例, OC8例で周術期の手術侵襲メディエーターを測定した. 方法: 臨床経過について術後疼痛, 消化管機能, 術後在院日数, 合併症を比較した. メディエーターについてG-CSF, 白血球, 顆粒球エラスターゼを術前, 術直後, 第1病日, 第3病日に測定し, その変動について比較検討を行った. 結果: 1. 術後臨床経過ではLACで疼痛が少なく, 消化管機能回復が早く (経口摂取開始: LAC: 3.0±2.8日vs OC: 5.8±1.6日, p<0.0001), 術後在院日数が有意に短かった (LAC: 15.8±6.8日vs OC: 26.5±7.2日, p<0.0001). 2. メディエーターの比較ではLAC群でG-CSFにおいて術後第1病日 (IAC: 29.3±11.8pg/ml vs OC: 99.0±77.8pg/ml, p=0.0154), 第3病日 (LAC: 14.8±3.5P9/ml vs OC: 33.2±7.8P9/ml, P=0.0005), 白血球数において術後第1病日 (LAC: 8300±2048/μl vs OC: 10440±968/, al, p=0.0161), 第3病日 (LAC: 7033±1177/μl vs OC: 8340±1490/μl, p=O. 0428), 穎粒球エラスターゼにおいて術後第1病日 (LAC: 91.2±25μg/l vs OC: 129.1±46μg/l, p=0.0486) の上昇が少なく, 早期に回復した. 結論: 術後臨床経過, メディエーター推移の比較により進行大腸癌においてもLACがOCと比べ低侵襲であることが示唆された.
  • カピ マリア, 竹内 史比古, 大熊 慶湖, 黒田 誠, 崔 龍沫, 山本 健二, 平松 啓一
    2005 年 51 巻 3 号 p. 352-360
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: ヘテロバンコマイシン耐性ブドウ球菌 (ヘテロVRSA) は, バンコマイシン耐性を示す細胞集団を発生させることが多いために, バンコマイシン耐性感染の原因になることがある. ヘテロVRSA株からの突然変異によりバンコマイシン耐性臨床分離株と同じ表現型特性を有する突然変異株が実際に生じうるのかを確かめる. 対象: バンコマイシンヘテロ耐性株Mu3を用いた. 方法: LuriaとDelbrükによるfluctuation testにより, Mu3由来の菌集団の一部にバンコマイシン耐性突然変異株が自然に発生しているかを調べた. 結果: バンコマイシン耐性突然変異株は, 細胞分裂あたり2.4-4.9×10-6という高頻度で発生し, これらの変異株はバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌臨床分離株に特徴的な表現型である細胞壁の肥厚化と成長速度の低下を示した. 結論: ヘテロVRSA株に感染した患者の体内ではバンコマイシン軽度耐性が高頻度に出現する可能性のあることが示唆された.
  • 大内 昌和, 石戸 保典, 高橋 玄, 柳沼 行宏, 川瀬 吉彦, 坂本 一博, 鎌野 俊紀, 狩野 元成
    2005 年 51 巻 3 号 p. 361-367
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 当教室ではenzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) 法による便中胆汁酸組成比Deoxycholic acid (DCA) /Cholic acid (CA) が大腸癌高危険群の同定に有用であることを報告してきた. ELISA法は定性能には優れる反面, 分離能が劣るため, 両能力を一体化させた複合分析法であるGas Chromatography-Mass Spectrometry (GC-MS) 法により各胆汁酸の総胆汁酸に占める比率を求め, 便中DCA/CAの意義を改めて検討した. 対象: 治癒切除術が施行され, GC-MS法にて便中胆汁酸が測定できた大腸癌症例39例と良性疾患症例15例を対象とした. 方法: 大腸癌症例術前の便中一次胆汁酸であるCA, Chenodeoxycholic acid (CDCA) と二次胆汁酸DCA, Lithocholic acid (LCA) をGC-MS法で測定し, 良性疾患のそれらと比較検討した. 結果: 大腸癌症例の便中DCA/CAが良性疾患のそれよりも有意に高値であることが確認された. また, 総胆汁酸中のCAの比率は良性疾患症例が大腸癌症例と比べ有意に高値を示し, DCAの比率は良性疾患症例と比べ大腸癌症例で有意に高値を示した. さらに総胆汁酸中のCDCAの比率はCAと同様, 良性疾患症例が大腸癌症例と比べ有意に高値を示したが, LCAの比率は良性疾患症例と大腸癌症例で有意差は認めなかった. 結論: GS-MS法によっても便中DCA/CAが大腸癌症例で高値であることが再確認され, 腸内細菌によるCAからDCAへの還元率が便中DCA/CAと大きな関わりがあることが判明するとともに, 定量性がより重要となる高次の大腸癌スクリーニングにGC-MS法による便中胆汁酸の検討が有用であることが確認された.
  • 篠原 光代, 生木 俊輔, 松本 光彦, 中島 一郎, 越川 憲明
    2005 年 51 巻 3 号 p. 368-373
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 近年, 顎口腔系と全身の運動機能に関して様々な方面からの研究がなされてきている. 今回, 運動経験の豊富なスポーツ選手の口腔健康度と顎口腔系の筋力の関係を知る目的で, 口腔健康度と咬合力の診査計測を行った. 対象: 本学スポーツ健康科学部のスポーツ選手20名, 対照としてスポーツ部に属さない医学部学生8名に対して診査計測を行った. 方法: 口腔内状況を診査し, 口腔健康度を表す指標の一つであるDMF歯数 (未処置歯, 喪失歯, 処置歯の合計) を算出し, 非運動時の最大咬合力を測定した. スポーツ選手群と対照群で口腔健康度 (DMF歯数) と咬合力に有意差が認められるか否か, また各群の口腔健康度 (DMF歯数) と咬合力との相関について解析した. 結果: 1. 対照群とスポーツ選手群のDMF歯数の平均は7.3と8.2, 咬合力の平均はそれぞれ728.8Nと789.8Nであった. 2. DMF歯数と咬合力は共に, スポーツ選手群と対照群との間に有意差は認められなかった. 3. DMF歯数と咬合力との間には, 対照群では有意な負の相関が認められたが, スポーツ選手群では認められなかった. 結論: DMF歯数が高い (口腔健康度が低下する) ほど顎口腔系の筋力が低下する傾向が認められた. 一方, スポーツ選手群ではDMF歯数と咬合力との間に有意な相関は認められなかった. このことから, スポーツ選手は全身の運動を行うことによって, 顎口腔系の筋力の低下を防いでいることが示唆された.
第16回都民公開講座《現代の病:「うつ」と「もの忘れ」》
  • 井原 裕
    2005 年 51 巻 3 号 p. 378-385
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    うつ病には, わかりやすい症状とわかりにくい症状とがある. ほとんどの症状は, わかりやすい. 気が滅入る, 悲しい, あとに引きずる, 決断ができない, 興昧が湧かないなどである. このような症状を呈すると, 「申し訳ない」「生きていても仕方ない」といった厭世的な思いに陥りがちである. また, 眠れない, 食べられない, 夜「その気」になれない, 「月のもの」が不規則になるなどの症状も出やすい. 一方で, わかりにくい症状もある. 頭痛・耳鳴り・めまい・下痢と便秘の繰り返しなどである. うつ病のなかには, これらのような身体の症状だけを呈する場合もあり, 内科疾患と紛らわしい. 感情面での問題が身体症状によってマスクされているタイプの場合, 不快な出来事に対する情緒的な反応を抑制しすぎるため, 鬱積した感情のはけ口がなく, 身体的な症状として出てしまう場合が多い. うつ病の回復は, 焦燥, 憂うつ, 意欲の順に回復していく. 職場不適応によるうつ病の場合, 発病のきっかけとして仕事と本人の個性とのミスマッチがある場合が多い. したがって, 復職前に労務上の配慮が与えられることが望ましい. 自殺は, うつ病の症状としてもっとも警戒すべきものである. 自殺念慮には周期性があり, あとから考えて「なんて馬鹿なことを」と思えるときがかならず来る. そのときまで, 何とか全力で自殺をくい止めることである. うつ病は, 自殺さえなければ, 「死に至る病」ではない. 憂うつ自体は病的なものではなく, 正常な情緒的反応であり, うつ病も, その人の人生にとって重要な意義をもつ場合もある.
  • 荒井 稔
    2005 年 51 巻 3 号 p. 386-391
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    うつ病は, 有病率が3%から8%の一般的な病気であり, 適正な治療を受ければ半年で約80%が寛解する. しかし, 症状は, 心身領域に現れ, 思考の渋滞化, 行動の制止, さまざまな身体症状などがあり, 診断が適正に行われない場合には, 軽快するのに時間がかかることもあり, さらに, 症状のひとつの自殺念慮の結果として自殺が完遂されることもある. 現在, 日本の自殺は, およそ3万3千人におよび, うつ病の診断と治療は, 自殺予防といった観点からも重要である. うつ病の病態生理としては, 脳内のシナプス間隙におけるセロトニンやノルアドレナリンの枯渇と考えられており, これらの神経伝達物質の枯渇を抗うつ薬等で治療することによって, 軽快, 寛解, 完治することを述べた.
  • 井関 栄三
    2005 年 51 巻 3 号 p. 392-396
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    1) 痴呆とは, 脳自体の病的変化によって, 一応発達した知的機能が, 持続的に社会生活に支障をきたす程度に低下した状態をいう. 2) 生理的老化は身体的老化の一つで, 誰にでもみられ, 日常生活に支障はないが, 痴呆は脳の病気により, 一部の人にみられ, 日常生活に支障をきたす. 3) 痴呆の症状は, 記憶の障害, 見当識の障害, 認知・行為・言語の障害, 判断・計算・抽象思考の障害, 意欲・感情・人格の障害, よりなる. 4) 記憶の障害は, 度忘れとは異なり, 新しい記憶から忘れ, 進むと古い記憶も忘れる. 身体で覚えた記憶は忘れにくい. 5) 見当識の障害は, 時間の見当識, 場所の見当識, 人物の見当識の障害よりなる. 6) 認知・行為・言語の障害は, 親しい人の顔が判らない失認, 服が正しく着られない失行, 適切な文章・単語がでない失語よりなる. 7) 判断・計算・抽象思考の障害は, 作業の間違いが多い, 家計簿の計算ができない, 想像力がなくなる, などよりなる. 8) 意欲・感情・人格の障害として, 自発性に乏しい, 怒りっぽい, 多幸的, などがある. 9) 痴呆に伴う精神症状・行動異常として, 抑うつ状態, 幻覚, 妄想, 興奮, 俳徊などがある. 10) 痴呆は年齢とともに増加し, 80歳を境に急激に増加する. アルツハイマー型痴呆が血管性痴呆より多い. 11) 軽度認知障害 (MCI) とは, 記憶障害を認めるが, 認知機能障害がそれ以外に及ばない状態をいう. 12) 高齢者のうつ病の特徴として, 抑うつ気分・精神運動抑制が目立たない, 不安・焦燥・心気・妄想が目立つ, などが挙げられる. 仮性痴呆は, 痴呆と間違われ易いが, うつ病の治療により改善するものをいう. 13) うつ病の痴呆への移行が報告されている, 器質性うつ状態として, 脳血管障害に伴ううつ状態と変性疾患に伴ううつ状態とがある.
  • 一宮 洋介
    2005 年 51 巻 3 号 p. 397-400
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    2004年のわが国の人口統計では, 65歳以上の老年人口が総人口に占める割合が19.5%に達し, 90歳以上の高齢者は100万人を超えた. 人口の超高齢化に伴い, 加齢が最大の危険因子であるアルツハイマー病をはじめ認知症の診断と治療法の確立は急務といえる. 本稿では現時点で行われている認知症の診断 (老人用知能検査・脳の形態学的検査・脳機能の検査・遺伝子の検査) と治療 (薬物療法・非薬物療法的アプローチ) および今後の治療戦略について概説する.
症例報告
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
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