順天堂医学
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第18回都民公開講座《皮膚の健康―皮膚をいかに若々しく保つか―》
皮膚科医が考えるアンチエイジング
-皮膚老化の予防法と対応について-
須賀 康
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2006 年 52 巻 3 号 p. 429-436

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抄録

加齢のメカニズムの解明と老化の防止は現代の医学, 生物学の重要なテーマである. なかでも《皮膚》は個体の老化を如実に映し出す鏡であり, 美容上の観点からも, その防御や改善に対する関心は高い臓器であると言えよう. 皮膚の老化には, 年齢による〈生理学的な老化〉以外にも〈光老化〉が知られている. すなわち, 細胞周期や新陳代謝が低下し, 内分泌・免疫機能も衰えてくることにより生じる〈生理学的な老化〉に対して, 〈光老化〉は直射日光に多くの時間, 曝露されることにより皮膚組織中に酸化的プロセスが生じることが原因となる. 光老化の反応は, 紫外線に対する曝露の程度やスキンタイプにも左右されるが, 実に多くの美容的な問題に関わっており, シミ, シワ, および皮膚癌の発生にも大きく関与している. 光老化の予防にあたっては, 紫外線の遮断を徹底するサンケアが最も大切である. また, 日焼けをさせない最も手軽な手段は日焼け止め (遮光剤) の使用である. また, 今回は日光老化がすでに始まっている皮膚, 特に顔面露光部に現れる代表的な老徴であるシミ (日光黒子), およびシワについてその抗老化療法 (アンチエイジング) を言及した. すなわち, シミの病変部では色素細胞のメラニン産生が過剰となっている. また, 表皮細胞のターンオーバーも低下して, メラニン色素が表皮基底部に沈殿してしまうことも原因の一つである. このため, メラニン生成酵素チロシナーゼを阻害する美白剤 (ハイドロキノン, ビタミンC誘導体) や表皮のターンオーバーの低下を回復するケミカルピーリングがアンチエイジングとして効果的である. 一方, シワは日光老化により生じた真皮の局所的な変形が, 拡散出来にくくなるために生じたものである. 従って, レチノイン酸をはじめとした抗シワ剤で真皮構造を再生させる薬物治療を行うことが効果的である. 特にフォトフェーシャル療法Intense Pulsed Lightをはじめとする光治療は皮膚の中で多段階的な効果を示すことが判明しており, シミとシワの両方をターゲットとする, アンチエイジング治療として, 今後普及すると思われる.

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