抄録
これまでの造血器悪性腫瘍に対する化学療法が成功した代表的な例として急性骨髄性白血病に対するアントラサイクリン系薬剤+cytarabine療法, びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するCHOP療法が挙げられ, いずれもその治癒率は30-40%であった. これらの治療では, アントラサイクリン系抗癌剤, DNA代謝拮抗剤, アルキル化剤, ビンカアルカロイド等の抗癌剤が使用され, いずれもDNA損傷および細胞周期の阻害が主たる作用機序である. このためたとえば静止期の細胞が大部分を占める濾胞性リンパ腫には十分な効果が期待できなかった. 今日では, これまでに明らかにされた造血器悪性腫瘍の分子レベルでの病因・病態の理解を基盤として, いくつかの造血器悪性腫瘍において増殖促進, 細胞分化・アポトーシス抑制等の異常シグナルを特異的に阻害する分子標的療法剤が開発・使用されている. ここでは, 慢性骨髄性白血病に対するイマチニブ, 急性前骨髄球性白血病に対するall-trans型レチノイン酸, 濾胞性リンパ腫に対するリッキシマブを用いた治療に関して概説する.