抄録
アルツハイマー病のアミロイド (Aβ蛋白) が蓄積する機構はほぼ解明されたと考えられアミロイド蓄積抑制の治験薬が進行中である. その動向から早期診断, 早期治療が唱えられるようになった. 本稿では二大変性認知症のアルツハイマー病 (AD) とレビー小体型認知症 (DLB) についてそれぞれの症状, 診断, 画像, 分子機構, 治療について最近の知見を中心に説明する. 症状はADではエピソード記憶障害で始まるがDLBは, 幻視, 意識の変動, パーキンソニズムと多彩である. 画像診断は正常脳データベースと比較し統計値を画像化することによってMRIの脳委縮部位や脳血流低下部位検出の感度をあげ, その診断に応用されている. ADでは後部帯状回, 楔前部がDLBでは同部位と後頭葉の血流低下が特徴である. 疫学調査ではDLBはADより予後が悪く全経過10年以下と報告されている.
ADではAβ蛋白が, DLBではαシヌクレインが原因遺伝子の一つであり, かつ, 老人斑および, レビー小体の構成成分であることからその病態の本質であるとされている. 最近では, 両者ともそのオリゴマーがシナプス機能障害をひきおこし, 神経細胞障害から神経症状をおこすと考えられている. 現在, 両者に処方できる薬剤は抗コリンエステラーゼ薬の塩酸ドネペジルであり, 対症療法にとどまるが, disease modifierとして治験が多数行われている.