順天堂医学
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話題 食中毒・感染症腸炎への対処
食中毒・感染性腸炎を疑う患者の微生物検査の出し方と解釈
近藤 成美
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2009 年 55 巻 2 号 p. 107-112

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抄録
便の培養検査については, (1) 検体の取扱いで注意すべきこととして, 綿棒による採取は行わない方が良い, 低温で死滅しやすい菌が予想されるときには冷蔵せずに速やかに検査するなど, 注意すべき点があります. (2) 塗抹検査は原虫や寄生虫の検査目的が主ですが, 細菌によってはグラム染色が有用な場合もあります. (3) 培養検査は, 目的とする菌により特定の培地が必要なので臨床情報を記載します. また, 検査オーダー時に想定する菌を書かないと, 培養の対象とされないことがあり注意が必要です. 便培養は, 外来では血便や発熱・腹痛などの症状がある時にオーダーします. また入院72時間以降の患者の下痢は, ほとんどが医原性かClostridium difficileによるため, 欧米では, 小児, 高齢者や免疫不全の患者を除いて便培養の適応はないとされています. 下痢原性大腸菌には5種類ありますが, (1) 主な菌としては腸管出血性大腸菌 (EHEC) と毒素原性大腸菌 (ETEC) があり, (2) いずれもベロ毒素やエンテロトキシンの産生を確認することで診断されます, (3) 血清型はあくまでも参考として用います, (4) その他の下痢原性大腸菌については, 一般の検査室では診断は困難です. 感染性腸炎の迅速診断キットとしては, (1) 細菌ではEHECやClostridium difficileなどがありますが, 感度・特異度などに問題があり, 培養・同定検査が併用されることも多いです, (2) ロタウイルス, アデノウイルスについては利用可能なキットが開発されています, (3) ノロウイルスについては, まだ保険収載されていませんが, 改良が進んできています.
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© 2009 順天堂医学会
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