2022 年 78 巻 7 号 p. III_285-III_296
近年,気候変動の影響による水環境の変化が顕在化しており,ダム貯水池においては植物プランクトン濃度等の変化が懸念される.そこで,本研究では気候変動によるダム貯水池の植物プランクトン濃度への影響評価と植物プランクトン濃度増加に対する適応策と考えられる曝気循環施設の有効性を評価するための数値計算をダム貯水池の規模を変化させた仮想ダム貯水池で行った.計算の結果,将来気候シナリオでは5-6月の表層Chl-a濃度の上昇傾向がみられ,気温上昇が大きいシナリオほどその傾向は強く,すべての貯水池規模で同様の傾向がみられた.また,将来気候シナリオにおいて曝気循環施設による適応策の効果を試算した結果,気候変動の影響により上昇した表層Chl-a濃度を一定の割合で低減可能であることが示され,曝気循環施設の植物プランクトン濃度増加に対する適応策としての有効性が確認された.