順天堂医学
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特集 第323回順天堂医学会学術集会
ストレスと消化器疾患
北條 麻理子渡邊 純夫
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2010 年 56 巻 6 号 p. 537-542

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抄録
ストレスにより発症, 再燃, 悪化, 持続する消化器疾患の代表である胃十二指腸潰瘍, 潰瘍性大腸炎, 慢性膵炎, そして過敏性腸症候群や機能性ディスペプシア等の機能性消化管障害について述べる. 身体的ストレスの場合, 急性胃粘膜病変を生じる場合が多い. 胃十二指腸潰瘍発症にはH. pyloriの存在が最重要であるが, 心理的ストレスによって胃潰瘍が発症しやすくなる. 長期間にわたるストレスは緩解期の潰瘍性大腸炎の再燃を促し, 慢性膵炎患者のうち準確診例と疑診例はストレスなどにより疼痛症状が強くなることがある. ストレスが胃腸の運動異常や知覚過敏を引き起こし, それに伴って腹部愁訴が生じ, 反対に腹部愁訴が心理状態を悪化する. これらは日常生活でしばしばみられるが, これが脳腸相関である. 機能性消化管障害の患者は, 健常人と比較してストレスに対してより強い運動異常や知覚過敏が生じる. 脳腸相関のメカニズムはまだ解明には至っていないが, コルチコトロピン放出因子が脳腸相関を制御する物質として注目されている.
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© 2010 順天堂医学会
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