順天堂医学
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56 巻, 6 号
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目次
Contents
特集 第323回順天堂医学会学術集会
  • -最近新たに認識された, ストレス性心疾患「たこつぼ心筋症」-
    鈴木 宏昌
    2010 年 56 巻 6 号 p. 520-528
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    かつて働き盛りの過労死の死因に急性心筋梗塞が多かったように, ストレスと循環器疾患, 特に虚血性心疾患発症との関連性は大きい. 最近, 心筋梗塞に酷似しているが似て非なるストレス性心疾患が新たにわかった. 家族の突然死や事故遭遇など予期せぬ出来事がストレスとなり, 突如胸痛や息切れを生じ, ST上昇や深い陰性T波, 心筋逸脱酵素上昇を認め, 急性心筋梗塞の疑いで心臓カテーテル検査を行うが冠状動脈は正常で, 左室心尖部が瘤状拡大し, 心基部は過収縮しばしば駆出路狭窄を生じる. 冠状動脈の支配領域に一致しない収縮障害で, 多くは1週間程度で自然回復する. 心筋逸脱酵素上昇は心筋梗塞に比べ軽度である. 本疾患は日本で初めて認識され, 急性期の左室収縮末期像が古来蛸漁で使われた蛸壺の形状に似ており「たこつぼ心筋症」と命名された. 多くが情動ストレスで生じることや閉経期以降の中高年女性に好発することが特徴である. 2004年の新潟中越大地震では震災直後に急増しそのほとんどが女性であった. 予後はおおむね良好であるが, なかには低血圧や心原性ショックを併発する. 気管支喘息重積発作, 肺炎, 重症筋無力症クリーゼ, てんかん発作, 人工透析中や気管内挿管後, 外科周術期など非心臓疾患や侵襲的検査, 治療などの様々な身体的ストレスでも発症する. 原因不明だが, 交感神経系亢進やカテコラミン過分泌の関与が疑われている. まれな疾患とはいえ, 幅広い医療領域で遭遇する可能性があり, まずは本疾患の存在を広く周知することが大切である.
  • 熱田 了
    2010 年 56 巻 6 号 p. 529-536
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    近年, 社会環境・システムの変化により心理的ストレスは増大傾向にある. それに伴い, 心理ストレスそのものが種々の疾患に影響を与え, 病態が重症化・遷延化することが生じている. 心理ストレスにより生じる一連の疾患を心身症といい, 定義としては“その発症に心理社会的な因子が密接に関与し, 器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう. ただし, 神経症やうつ病など, 他の精神障害に伴う身体症状は除外する”となっており近年増加傾向にある. また, 呼吸器疾患において心身医学的配慮が必要な疾患として気管支喘息, 神経性 (心因性) 咳嗽, 過換気症候群などがある. 特に気管支喘息も心身症と同様に近年増加傾向にあり, 加えて肉体的ストレスのみならず精神的ストレスが疾患の難治化, 遷延化に大きく関与しており, 心身症とともに大きな社会的な問題ともなっている. 本稿では気管支喘息と心身症に関する原因・診断・治療等に関して解説する.
  • 北條 麻理子, 渡邊 純夫
    2010 年 56 巻 6 号 p. 537-542
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    ストレスにより発症, 再燃, 悪化, 持続する消化器疾患の代表である胃十二指腸潰瘍, 潰瘍性大腸炎, 慢性膵炎, そして過敏性腸症候群や機能性ディスペプシア等の機能性消化管障害について述べる. 身体的ストレスの場合, 急性胃粘膜病変を生じる場合が多い. 胃十二指腸潰瘍発症にはH. pyloriの存在が最重要であるが, 心理的ストレスによって胃潰瘍が発症しやすくなる. 長期間にわたるストレスは緩解期の潰瘍性大腸炎の再燃を促し, 慢性膵炎患者のうち準確診例と疑診例はストレスなどにより疼痛症状が強くなることがある. ストレスが胃腸の運動異常や知覚過敏を引き起こし, それに伴って腹部愁訴が生じ, 反対に腹部愁訴が心理状態を悪化する. これらは日常生活でしばしばみられるが, これが脳腸相関である. 機能性消化管障害の患者は, 健常人と比較してストレスに対してより強い運動異常や知覚過敏が生じる. 脳腸相関のメカニズムはまだ解明には至っていないが, コルチコトロピン放出因子が脳腸相関を制御する物質として注目されている.
  • 酒井 佳永
    2010 年 56 巻 6 号 p. 543-549
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    ストレスが増加しつつある現代社会において, 精神的, 身体的な健康を保つためにはストレスへの対処力を高めることが必要である. うつ病に対する心理療法として開発された認知行動療法は, 不安障害やアルコール依存症など様々な精神疾患における効果が実証されている. また, 最近では心疾患やがんなど身体疾患をもつ人のストレスマネジメントにも効果があること, さらに生活習慣の改善, 大学生の適応改善などにも効果があることが示されており, 精神疾患や身体疾患の一次予防の効果も期待されている. 今後, 教育, 産業など様々な分野で, 認知行動療法的なアプローチを用いたストレスマネジメントプログラムが広がっていくことが期待される.
原著
  • 杉村 亮平, 黛 暢恭, 池田 志斈
    2010 年 56 巻 6 号 p. 550-557
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    背景 : ダリエ病 (DD) とヘイリーヘイリー病 (HHD) は, 共に表皮細胞間の解離と異常角化を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である.DDは小胞体に局在するCaポンプ蛋白であるSERCA2 (sarco/endoplasmic reticulum Ca2+ ATPase type 2 isoform) をコードするATP2A2遺伝子の変異によって, またHHDはゴルジ体に局在するCaポンプ蛋白であるSPCA1 (a homologue of Golgi secretory pathway Ca2+ ATPase) をコードするATP2C1遺伝子の変異によって引き起こされる.DDおよびHHDの臨床症状はUVB照射によって悪化し, 正常培養ヒト表皮角化細胞においてATP2A2およびATP2C1のmRNAの発現量は, UVB照射によって抑制される.一方で, UVB照射はシクロオキシゲナーゼ (COX)-2のmRNA発現を誘導する. 目的 : ATP2A2, ATP2C1の各遺伝子のmRNA発現に対するCOX-1, 2の及ぼす影響を調べる. 方法 : UVB照射によってATP2A2, ATP2C1のmRNA発現を抑制した培養ヒト表皮角化細胞に, セレコキシブ (選択的COX-2阻害薬), SC-560 (選択的COX-1阻害薬), アピゲニン (UVB照射によるCOX-2発現誘導を抑制する物質) を加え, 両遺伝子のmRNA発現量をリアルタイムPCR法にて定量した. 結果 : セレコキシブとアピゲニンはUVB照射によって抑制されたATP2A2, ATP2C1のmRNA発現量を有意に増加させたが, SC-560はmRNA発現量をさらに減少させた. 結論 : COX-2はATP2A2, ATP2C1のmRNA発現を抑制し, 一方でCOX-1は, 両遺伝子の発現の制御に重要な役割を果たし, 表皮角化細胞におけるカルシウム濃度の恒常性の維持に必要である可能性が示唆された.
  • 山川 陽子, 大塚 宜一, 大谷 清孝, 藤井 徹, 永田 智, 山城 雄一郎, 清水 俊明
    2010 年 56 巻 6 号 p. 558-563
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    背景: 気管支喘息におけるロイコトリエン受容体拮抗薬の有用性は多数報告されているが, 食物アレルギーの検討は十分にはなされていない. そこで, 食物アレルギー患児におけるロイコトリエン受容体拮抗薬の有用性について検討した. 方法: 食物抗原の摂取により消化器症状, 皮膚症状, 呼吸器症状等を呈し, 食物アレルギーと診断した3-36ヵ月 (14±9.6ヵ月) の患児65例を対象にした. 食事療法を中心に治療を行った群32例, 食事療法とロイコトリエン受容体拮抗薬を使用した群33例の2群に分けた. 臨床症状, 血中好酸球数, 血清総IgE値, 血清サイトカイン値 (ECP, IL-4, IL-5, IL-6, TGF-b1) を治療前と治療開始後1年で統計学的検討を行い比較した. 結果: 食物アレルギー患児において, 正常健常児と比較し, 治療前の血中好酸球数, 血清総IgE値, IL-4, IL-5, IL-6, ECP値はいずれも高値だった. 食事療法を中心に治療を行った群では, 好酸球数の有意な低下を認めたが, IgE値は治療後に上昇した. 一方, 食事療法に加えロイコトリエン受容体拮抗薬を使用した群では, 血中好酸球数, 血清総IgE値, IL-4, IL-5, ECP値で有意な低下を認めた. 考案: ロイコトリエン受容体拮抗薬は, 気管支喘息の治療だけでなく, 食物アレルギーの治療においても有用であることが示唆された.
  • 大槻 将弘, 大久保 又一, 古川 岳史, 高橋 健, 稀代 雅彦, 大塚 宜一, 大日方 薫, 山城 雄一郎
    2010 年 56 巻 6 号 p. 564-571
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    背景 : 大動脈縮窄症に対するステント留置術後の狭窄性変化は, いまだに重要な問題である.しかし, 小児の大動脈縮窄症に対するステント留置術後の, 血管病理学的変化に関する研究は少ない. 目的 : 免疫染色を用い, 腹部大動脈へのステント留置術後の狭窄の機序を組織学的に検討すること. 方法 : 生後4-5週, 体重8-10kgの5頭のブタを使用した.ステント留置術2ヵ月後の腹部大動脈を摘出し, ヘマトキシリンエオジン染色を行った.またvascular endothelial growth factor (VEGF), interleukin-8 (IL-8), cyclo-oxygenase 2 (COX-2) およびperoxisome proliferatorsactivated receptor gamma antibody (PPARc) を用いて免疫染色を行い, その免疫組織学的変化を比較検討した. 結果 : 5例頭中1頭に狭窄性変化を認めた.この狭窄性病変部において, 好中球の集積が存在する新生内膜の増殖を認めた.またVEGF, IL-8, COX-2およびPPARcの強い発現が新生内膜に認められた. 考察 : ステント留置術後の動脈の狭窄性変化には, 組織の損傷に対する免疫学的反応に由来する慢性炎症が関与している可能性が示唆された.ステント留置術後再狭窄を防ぐためには, この炎症性変化を抑制することが重要であると思われた.
  • 高 志剛, 田代 良彦, 永易 希一, 丹羽 浩一郎, 小野 誠吾, 石山 隼, 杉本 起一, 秦 政輝, 神山 博彦, 小見山 博光, 高 ...
    2010 年 56 巻 6 号 p. 572-580
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    目的 : 大腸SM癌に対する腹腔鏡下大腸切除術の短期的予後および治療の妥当性について検討した.対象と方法 : 当科で1994年10月から2006年12月までに大腸SM癌に対して施行した腹腔鏡下大腸切除術症例に関して, 患者背景・手術成績・病理学的成績・治療成績を検討した. 結果 : 腹腔鏡下大腸切除術を施行した大腸SM癌は120例であった.性別は男性40例, 女性80例で, 平均年齢は59歳 (31-80歳) であった.術式は結腸部分切除術28例, 回盲部切除術8例, 結腸右半切除術10例, S状結腸切除術40例, 前方切除術16例, 低位前方切除術17例, 腹会陰式直腸切断術1例であった.平均手術時間は227分 (147-535分) で, 術中平均出血量は33ml (2-910ml) であった.術中に重篤な合併症は認めなかった.開腹移行を3例 (2.5%) に認めた.術中死亡例や術後30日以内の死亡例は認めなかった.合併症に関しては縫合不全2例 (1.7%), 腸閉塞6例 (5%), 創感染4例 (3.3%), 再手術4例 (3.3%) を認めた.郭清したリンパ節は平均11個 (3-40個) で, そのうち106例 (88%) はリンパ節転移を認めなかった.リンパ節転移を認めた14例のうち1例 (0.8%) が1個, 1例 (0.8%) が2個, 2例 (1.7%) が3個のリンパ節転移を認めた. 郭清リンパ節個数はリンパ節郭清度と有意な関係であったが, リンパ節郭清度は出血量および手術時間とは関係せず, リンパ節郭清度は術中および術後合併症との有意な関係は認めなかった.平均術後観察期間は4.8年であり, その間に局所およびポート挿入部の再発は認めなかった.遠隔転移は3例 (2.5%) に認め, すべてが肺転移であった.3年間の無再発生存率は99.2% (120例中119例) であった. 結論 : 大腸SM癌に対する腹腔鏡下大腸切除術は安全で効果的であった.大腸SM癌に対する高次のリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下大腸切除術は短期的予後に影響を及ぼさなかった.
報告
  • 檀原 高, 清水 俊明, 小林 弘幸, 金子 和夫, 鈴木 勉, 柘植 俊直, 冨木 裕一, 三橋 直樹, 小池 道明, 田中 稔, 安本 ...
    2010 年 56 巻 6 号 p. 581-584
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2014/11/21
    ジャーナル フリー
    第1回初期臨床研修医のための学術集会が順天堂大学センチュリータワーで2010年7月2日に開催された. 順天堂大学附属4病院 (順天堂医院, 順天堂静岡病院, 順天堂浦安病院, 順天堂練馬病院) の初期臨床研修医225名 (1年目研修医の91.9%, 2年目研修医の71.9%, 全研修医の83.0%) がこの学術集会に出席した. この学術集会は研修医の学際的な活動を支援するために企画された. プログラム内容は4名の研修医による症例報告, 4名の指導医による症例報告に関連した事項のミニレクチャー, 2名の大学院生による研修発表から構成された. 特に, 大学院研究発表は, 今年の3月に開催された医学部大学院で実施されたポスター発表会で高い評価を得たものである. 研修医からのアンケートでは高い満足度が得られた.
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