高齢者における下肢筋力低下は,転倒リスクや歩行能力低下の原因となることから,早期の発見と予防が重要である.下肢筋力低下を発見するために,先行研究では最速歩行時の動作と下肢筋力の関係が調査されているが,被験者への負担が大きく,日常歩行動作から下肢筋力を推定する方法が必要である.また,歩行動作は性別によって異なるが,歩行動作の性差を考慮した下肢筋力推定に関する研究はない.そこで本研究では,性差を考慮して、日常歩行動作から下肢筋力を推定する方法を検討した.50歳以上の健常被験者44名(男性22名,女性22名)の通常歩行を計測し,男女別に下肢筋力推定モデルを構築した.その結果,男女別に推定モデルを作成した場合,下肢筋力の推定値と実測値の相関係数が0.55,絶対誤差0.12 N/kgであった一方,性別毎に作成したモデルでは,男女それぞれで相関係数が0.70以上,絶対誤差0.11 N/kgとなり精度が向上した。このことから,歩行動作計測に基づく下肢筋力推定では被験者の性別がパラメータとして重要であることが示された.