生活空間の深層に存すると考える,風土に根ざした土着の技術に埋め込まれた人間と環境と人工物の関係に関する当事者が自覚しない知を顕在化する方法を構築することを目的とする。 建築のフィールドをドメインとする研究者による,琉球,南西諸島の離島や東南アジアの山奥の少数民族の伝統的集落における,継続的な研究の実践とその探究方法について報告する。生活空間や居場所の創造,生活空間におけるふるまい,技能伝承,地域の価値の発見などに関係する。 集落の生活の「分厚い現実」が直接的に民家や集落の「生きる」空間を構成すると感じる。これを記録し書くために,多様な探究の内容と方法を試みている。繰り返し集落を訪れる,一緒に食べ飲む,空き家を借り長期滞在して生活する,行事や祭祀に参加する,集落空間の石垣を積む,闘牛場整備に関わるなどである。東南アジアの山奥の集落では,彼らの言語を話し彼らの民族の名もつ日本人に,言葉だけでなく生活や文化の理解を補ってもらう。 このような探究の試みを,「臨床の知」を探究する方法論の構築という観点で考察する。