登場人物は,物語を面白くするのに不可欠な要素の一つである.魅力的な登場人物は登場する作品に良いイメージを与え,読者をより惹きつける要因となり得る.その為,現在に至るまで物語論や自然言語処理の分野では,登場人物の役割や人間関係等に関する多数の研究が行われてきた.しかし,どのシーンにどのような役割を持つ登場人物が何人出てくるのか等,登場人物単体ではなく,その他の要素と複合的に計量的な分析を実施した研究はほとんど行われていない.そこで本研究では,バトル系とスポーツ系の少年漫画の物語をシーン単位で分割と分類を行い,登場人物の人数と役割に関するデータセットを構築した.また,構築したデータセットに基づき,物語機能,登場人物の役割と人数の3種類の要素の関係性抽出やジャンル間比較をχ二乗検定や因子分析を用いて行った.結果として,バトル系では「強敵出現」,「修行」,「戦闘」,スポーツ系では「試合」,「敵味方対立」,「ライバル視点」因子などの特徴的なパターンが得られた.これらは該当ジャンルの典型的物語構造に合致している.本研究の成果は物語自動生成や創作者のサポートシステム構築などに応用可能と考えられる.