音楽を評論する文書に書かれている内容やその書き方に対する詳細な分析は、その産業的あるいは学術的な発展の可能性にもかかわらず、まだ十分になされているとは言えない。本研究では、音楽評論文書の各文をその内容に従って計算機で自動的に分類するタスクに取り組んだ。また、このために用いる分類スキームの策定、およびそれに基づいてアノテーションを行ったコーパスの構築も行った。評論文書の各文は、楽曲の背景を述べる部分や、奏者の来歴を記す部分、演奏の特徴を描写する部分、あるいは筆者が演奏から受けた印象を表現する部分、などから構成されている。このような区分を自動的に施せる分類器を作成するために、まず人手によって明確な区分を行えるようなアノテーションスキームの設計を行った。このスキームに基づいて、音楽評論雑誌やウェブサイトから収集した評論文書データに対し人手でアノテーションを付与し、機械学習分類器の訓練および評価に用いるデータセットを構築した。これらの結果について、アノテータ間のアノテーション一致度および分類器の精度（F値）による評価を行った。
