人工知能学会全国大会論文集
Online ISSN : 2758-7347
第36回 (2022)
セッションID: 4K3-GS-1-04
会議情報

臨床の発想システム論考
*諏訪 正樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

本稿は内的表象(知覚、認識、理解、意図)を動的に生み出す認知プロセスの論考である。それは、記憶によるトップダウンな制御と感覚入力信号のボトムアップ処理のせめぎあいの結果として、知覚像、認識、理解、意図が能動的に生成されるということである。この説は脳科学の知見からも支持を得ている。 内的表象は感覚入力信号からその高次情報を抽出し尽くしたものではなく、記憶の表象(ダマシオは傾性的表象と呼ぶ)からのトップダウン制御を受けながら主体がつくりだす産物である。知覚は受動的ではない。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」はその典型であろう。 AIや認知科学の礎であった情報処理モデルはこの能動的な認知を表現できていない。環境を外の存在と規定し、受動的な知覚と環境への行動を内的表象と環境のインターフェースとしてきた。 この認知モデルは過去の経験や感情など個人固有性(身体性および一人称視点)を反映し、いま眼前にある状況に応じた内的表象を生成するという、臨床の知のあり様を体現する。特に、発想システムの構築においては、AIの大きな壁と評されてきたフレーム問題の理解を深める緒になろう。

著者関連情報
© 2022 人工知能学会
前の記事 次の記事
feedback
Top