医薬品の臨床開発では,多岐に亘る複雑な情報を整理して意思決定する必要がある.この過程において,短期間で重要な論点を洗い出し,効果的な戦略を立てることが求められる.特に,臨床試験計画における疾患評価項目(EP)の設定は,医薬品のプロファイルを評価する上で重要な要素である.ナレッジグラフ(KG)は,情報を関係性に基づいて統合し,新たな関連性を推論可能にする技術である.KGの情報や推論結果は,臨床開発に求められる網羅性や効率性の向上への貢献が期待できる.さらに,生成AIをインターフェースとして活用することで,臨床開発研究者間の議論を促進できる可能性がある.本研究では,KGと生成AIを用いた臨床試験のEP探索手法を検討した.生命化学情報のKEGGと臨床試験情報のClinicalTrials.govを統合し,1)KGの1hop検索,2)2hop以上の検索,3)KG補完アルゴリズムによるリンク予測を実装し,それぞれの結果を生成AIで要約・レポート化した.臨床開発研究者による定性評価の結果,網羅的かつ効率的な情報抽出が可能であることが確認された.今後はデータソースの拡充と推論精度の向上が課題となる.