日本応用数理学会年会予稿集
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セッションID: W02
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W02 自己組織化現象の数理モデルとシミュレーション
周期格子構造の階層的対称性の喪失
有尾 一郎高橋 浩樹
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抄録

古典的な対称性の研究は,その対象とする系に対称性が存在するか否かということに力がおかれてきた.近年,いくつかの動的現象に対して対称性が見え隠れする事実が発見され,数学的な解釈がなされてきた.たとえば,ミルククラウン現象は,ミルクの滴が液面に落下した瞬間に一様な液面から円形(無限対称性)の壁が立ち上り,その先端からいくつかのミルク玉が跳ね上るとき有限な対称性へ低下する典型的な物理現象である.このように対称性が低下することを「対称性の自発的破れ」あるいは単に「対称性の破れ」と呼ばれている。近年対称性の利用法として群の表現に基づくブロック対角化法(BDM)が,MUROTA・IKEDAらによって対称構造物の並列FEM解析法として開発されてきた.一様に均質な構造系には幾何学的要因が暗黙のうちに隠れており,本研究は群積の変換則を開発することによって,高次対称性からの対称性破れ現象の過程としてとらえ、系の階層的対称性の喪失の仕組みを数値解析的に明らかにする.すなわち,周期境界を持つ格子構造を仮定し,群積(群のテンソル)で記述されたBDMを用いることによって,「隠れた対称性」と対称性の系列を数値的に見つけ出す.この群積によって,ある均質場に支配される偏微分方程式を対称性を張る空間に変換し,系の階層的対称性の喪失レベルを変換後の行列表示にて追跡し,対称性の階層構造を再現する方法を提案する.

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© 2002 日本応用数理学会
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