抄録
実現象を対象とする場合は様々な要因により生じたノイズの影響は不可避である。一般にノイズにはイナミカルノイズと観測ノイズの2種類が存在する。前者は、後者と異なり対象とする物理系の内部に存在する本質的なノイズであり、フィードバックの効果を含む極めて複雑な影響を系に与える。特に系がカオス的な場合、初期値依存性によりその影響は甚大となると予想される。しかし、機構が複雑であるが故にこれまでイナミカルノイズそれ自体の影響は十分には解析されてはいない。そこで本研究では、イナミカルノイズの影響は系の時間的なゆらぎに現れると考え、そうしたゆらぎは特異値分解(SVD)から得られた特異値の時間的なゆらぎとして抽出できることを示す。その結果より、イナミカルノイズのカオスへ及ぼす影響を評価する手段を提案する。尚、今回の解析対象は電子回路としたが、他の分野における実現象への応用可能性についてもじる予定である。