抄録
1971年の6月末より7月初句に,青森県水産増殖センターが行った陸奥湾の浅海漁場開発調査で,湾東北部の水深20mの海底より採集された甲殻綱等脚目の標本中にミズムシ亜目のムンナ科(Munnidae)と思われる1種類があった。この標本は体長約2.28mmの雌1匹で,胸部腹面の育房内に7匹の幼生をもっている。研究の結果Munna,Peurosignum Coulmannia属に近い種類であることがわかった。しかし,この種では体側に粒状の突起があり,大顎の鬚は痕跡的で,その値段に1小剛毛を生じ,大顎の白状突起の末端は細まることなく,広く白状をしている。また,眼は細長い眼柄の末端にある,などの特徴をもっている。上述の3属および他の既知の属には,これ等の諸特徴を完全に満足させるものがなく,ここに新属・新種Heterosignum mutsuensisとして記載する。(第11回動物分類学今大会にて講演)