動物分類学会誌
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日本産フトメクラガメ(Eocalocoris)属(異翅目,メクラカメムシ科)の再検討,および中国,四国山地産の1新種の記載
安永 智秀高井 幹夫
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1994 年 52 巻 p. 75-80

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抄録

フトメクラガメ(Eocalocoris)属は,四国,九州,対馬の山地に分布するE.hirashimai(フトメクラガメ)のみを含む1属1種の属として知られていたが,今回,四国山地(地芳峠,剣山)と中国地方(広島県芸北町掛頭山)で採集された1未記載種が,各形態を詳細に検したところ,本属に該当することが判明したのでEocalocoris albicerusと命名し,記載・図示した.本種は,触角を除いた体全体が白色ないし黄白色という,一見羽化直後のような色彩を呈しており,判別に困ることはない.このようなほとんど真白のメクラカメムシは非常に珍しい.本種はリョウブの花穂上で生活するが,その独特の色彩は黄自色のリョウブの花の色彩と実によく似ており,保護色とも考えられる.和名はその色彩にちなんで,シロバフトメクラガメ(新称)とした.本種の発見に伴い,フトメクラガメとの形態比較を行った上で属の再定義も行った.また,特に重要な形質である雌雄交尾器の形態について詳しく記載・図示した.

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© 1994 日本動物分類学会
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