1995 年 12 巻 3 号 p. 303-311
圃場栽培している Anthemis nobilis L. の頂芽よりシュート培養系を確立した. 得られたシュートを液体培地で培養しGC-MS分析を行うと, A. nobilis の主成分であり, 特徴的な香気成分として知られている angelate 類の生産量は少なく, 栽培系とは異なり高含量で geranyl isovalerate が生産された. また, geranyl isovalerate は, 培養で得られた幼植物体の根部において多量に生産されることが分かった. 増殖した幼植物体を土壌に移植した結果, geranyl isovalerate の含量は徐々に減少し, angelate 類の含量が急激に増加して20週目において isobutyl angelate が主成分となった. よって, 培養系と栽培系での環境条件の変化から, 香気成分生産に大きな違いが引き起こされることが判明した.