PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
高等植物の分裂準備帯におけるクラスリンが関与するエンドサイトーシス
唐原 一郎峰雪 芳宣
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2010 年 22 巻 1 号 p. 47-55

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抄録

分裂準備帯(プレプロフェーズバンド,PPB )は,植物細胞の細胞表層における将来の細胞分裂面の位置を決定する構造である.細胞表層に存在するPPB 微小管は前中期には消失するが,その消失後も何らかの位置情報がPPB の位置に残ると考えられている.最近の研究から,PPB が完成すると,特定の細胞骨格関連タンパク質がPPB の位置から排除され,その位置のネガティブ・メモリーとして残ることが報告されている.しかしこれらの細胞骨格タンパク質の排除域が形成されるしくみはまだわかっていない.私達は最近の論文において,加圧凍結法と二軸電子線トモグラフィー法を組み合わせ,タマネギ子葉表皮細胞のPPB の形成時における,クラスリンで被覆されたピットおよび小胞の分布を定量的に解析した.その結果,PPB 領域においてクラスリンの関わるエンドサイトーシスの頻度が高まっていることが示された.この事実に基づき,エンドサイトーシスによって何らかの膜タンパク質が除去されることによりPPB のネガティブ・メモリーが形成される,という仮説を提唱した.

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© 2010 日本植物形態学会
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