PLANT MORPHOLOGY
Online ISSN : 1884-4154
Print ISSN : 0918-9726
ISSN-L : 0918-9726
特集Ⅰ 加圧凍結法が切り拓く世界
超微形態と生体物質の保存に優れた加圧凍結技法
澤口 朗
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 25 巻 1 号 p. 7-10

詳細
抄録

細胞や組織などの生物試料を生体に限りなく近い真の姿で捉えることは,構造と機能の結びつきを解明する形態学者にとって究極の到達点である.その魅力的な手段として,瞬時に細胞や組織を凍結する種々の方法が用いられたが,細胞に含まれる水分が氷晶を形成し,微細形態が損傷されるため広汎な応用には至らなかった.そこで開発された加圧凍結技法は,2,100 barsの高圧下では水の凝固点が22 K低下し,粘性が1,500倍以上に昇ることで,氷晶の形成が抑制される原理に基づいた新たな凍結技法として注目を集めてきた.これまでに植物を含む様々な試料の加圧凍結が報告されているが,凍結された試料は凍結置換を経て樹脂包埋される透過型電顕観察,電子線トモグラフィー法,フリーズフラクチュアー・レプリカ法による観察,さらには凍結超薄切片作製によるクライオ電顕観察に応用されるなど,加圧凍結技法は欠かすことのできない存在となっている.本稿では従来の化学固定法では未解明の研究課題へのブレイクスルーが期待される「加圧凍結技法」の基礎と利点について概説する.

著者関連情報
© 2013 日本植物形態学会
前の記事 次の記事
feedback
Top