PLANT MORPHOLOGY
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特集 形態学と生理学の融合に向けて ―植物の「形」と「現象」の狭間を埋める研究の最前線―
植物組織における低分子量物質分布の質量顕微鏡による可視化
高橋 勝利姉川 彩大西 美輪山本 浩太郎石崎 公庸深城 英弘三村 徹郎
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2016 年 28 巻 1 号 p. 23-27

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抄録

質量顕微鏡では,レーザーを用いてサンプル組織の一部をイオン化し,イオン化した物質を質量分析器に取り込んで質量電荷比を測定する分析を,レーザー照射部位を二次元スキャンしながら行うことによって,サンプル組織の物質分布を推定することができる.高空間分解能(<10 μm)を持つMALDI/LDIイオン源を市販の9.4 T(テスラ)-FTICR/MSにつなぐことで,超高質量分解能(>100,000)と超高質量精度(<1 ppm)を併せ持つ質量顕微鏡を開発し,植物サンプルをスキャンし,代謝物質の組織分布を明らかにすることを試みた.シロイヌナズナの根組織を用い,質量顕微鏡による代謝産物の網羅的解析を進めたところ,根全体,根端,伸長域などで,固有の質量を持つ物質が異なった分布をすることが見出された.また,ニチニチソウを用いて二次代謝産物がどのように分布するかについての解析も行った.ニチニチソウの葉や茎の組織では,葉肉細胞,表皮細胞,異形細胞といった複数の細胞間を代謝産物が移動することで,二次代謝産物(テルペノイドインドールアルカロイド)の合成が進められることが報告されているが,質量顕微鏡を使用することで茎における二次代謝産物の細胞間分布の違いを直接的に見出すことに成功した.

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© 2016 日本植物形態学会
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