PLANT MORPHOLOGY
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特集1 多様な植物現象を理解するためのイメージング:細胞内構造から環境応答まで
植物受精卵が極性化する動態のライブイメージング
植田 美那子
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2017 年 29 巻 1 号 p. 23-26

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抄録

多細胞生物は複雑な構造をもつが,それらは全て受精卵という単一細胞に由来する.被子植物の受精卵は明確な細胞極性をもち,非対称に分裂することで,植物体の地上部の元となる頂端細胞と,根端や胚外組織になる基部細胞を生み出す.つまり,受精卵の極性は,植物体の茎頂と根端とを結ぶ上下軸(頂端-基部軸)の確立に重要だと考えられるが,受精卵が極性化する動態はこれまで全く分かっていなかった.しかし近年,被子植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いて,受精卵が極性化して不等分裂する一連の過程をライブイメージングできる系が開発されたので,本稿ではその手法について紹介したい.このライブイメージング系によって,受精卵がダイナミックに極性化する様子が初めて明らかになっただけでなく,画像解析や阻害剤による機能解析と組み合わさったことで,受精卵極性の定量化や,極性化を生み出す駆動力の特定も可能となった.本稿では,このような研究について紹介することで,今後の体軸形成研究の展開について考えたい.

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© 2017 日本植物形態学会
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