PLANT MORPHOLOGY
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特集2 「植物の柔軟な形態変化を理解するための計測と理論」
花の形態形成に影響を与える物理的圧力の計測
岩元 明敏
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2021 年 33 巻 1 号 p. 47-51

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抄録

植物の花の形態形成には,発生初期の花原基に外部から加わる力(物理的圧力)が重要な役割を果たすと考えられる.これまでにシロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) を対象とした新規実験系を開発し,シリコン製マイクロデバイスを用いて花芽分裂組織上の発生初期の花原基に人工的に物理的圧力を加え,花形態形成にどのような影響がでるかについての解析を進めてきた.その結果,この実験系で物理的圧力を与えると,花原基は通常と異なる発生をして様々な形態へと発達することが明らかとなりつつある.しかし,この新規実験系では与える物理的圧力を定量的に計測できておらず,与える物理的圧力の大きさと形態変化との関係は分かっていない.そこで,訪花の際に昆虫が花に与える微小な物理的圧力を測定するための装置“Pollination Simulation”を用いて,新規実験系でマイクロデバイスが花芽分裂組織に与える物理的圧力を計測した.“Pollination Simulation”はダブルベンディングビーム型ロードセルをコアセンサーとしてデバイス先端が受けた力を定量化する装置で元々は訪花昆虫がアキギリ属(Salvia)のレバーシステムを作動させる力を計測するために開発された.この装置を用いた計測の結果,マイクロデバイスによって数百µNオーダーの物理的圧力が花原基に与えられることが分かった.また,形状が異なる複数のマイクロデバイスと花芽分裂組織を用いた解析の結果,両者の組み合わせによって測定値が異なることも明らかとなった.このことから,“Pollination Simulation” は新規実験系によって花芽分裂組織(花原基)に加えられる物理的圧力の計測に適していることが示された.

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© 2021 日本植物形態学会
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