PLANT MORPHOLOGY
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特集2 「植物の柔軟な形態変化を理解するための計測と理論」
植物のパタン形成における理論:葉序と花発生を例に
北沢 美帆
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2021 年 33 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

植物の葉は,茎の周りに規則的に配列する.この規則的な配列は葉序と呼ばれ,理論と実験の協働によって研究が進められてきた.代表的な葉序パタンであるらせん葉序は,栄養成長期の葉だけでなく,松かさの鱗片,ヒマワリの種子など様々な器官で観察され,種子植物からコケ植物,さらには褐藻まで様々な系統でみられる.その一方で,近縁種,同一種内,時には同一個体内においても,異なる葉序パタンが観察されることがある.このような葉序の普遍性と多様性を理解するにあたって,数理モデルが有効な手段として活用されてきた.普遍性については,既存器官の近傍で新規器官の形成が抑制されるというルールのもとで,らせん葉序がモデルの詳細によらず安定に現れることから説明できる.多様性については,器官原基と茎頂分裂組織のサイズ比など生物学的に解釈可能な少数のパラメータにより,パタンの変化が引き起こされることから説明されている.さらに,数理モデルを用いることで,直感的には思いつかないようなパタンの変化を予測することも可能である.本稿では,私たちが葉序のモデルを左右相称花の発生に応用した例を紹介し,植物形態の理解における理論研究の有用性を議論する.

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© 2021 日本植物形態学会
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