PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
葉表皮組織を構成する細胞の顕微鏡画像解析
秋田 佳恵
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2021 年 33 巻 1 号 p. 89-94

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抄録

葉の最外層に存在している表皮組織を構成する細胞は,未分化な原表皮細胞から特徴的な機能および形態をもつ細胞へと分化する.孔辺細胞は対になって小さい穴(気孔)を形成し,表皮細胞は隣り合う細胞が互いに噛み合うジグゾーパズル型を呈する.さらに,この二種類の異なる細胞が協調することで気孔開閉が実現し,ガス交換や蒸散といった植物の生長に欠かせないマクロな機能を獲得している.細胞の協調には,組織内の空間配置が重要であり,シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) では気孔同士が隣接しないように表皮細胞を挟んで分布している.また,空間配置は細胞内部においても重要な役割を果たす.細胞内部におけるオルガネラの偏在や,異なるオルガネラ間の相互作用が,細胞の分化や成熟などマクロな機能の獲得に必要である.筆者は,異なるユニットの空間配置がマクロな機能獲得に寄与するという事象を階層縦断的に研究するには,葉の表皮組織が非常に適していると考え,細胞の形態形成や,細胞および細胞内構造の分布について解析に取り組んできた.本稿では,顕微鏡観察とそれに伴う画像解析により得られた知見を紹介する.

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© 2021 日本植物形態学会
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