2023 年 35 巻 1 号 p. 35-39
藻類おいてピレノイドは二酸化炭素固定の中心的役割を担うオルガネラで,Rubiscoタンパク質が葉緑体ストロマ内で液-液相分離により集合した構造だと言われている.近年,モデル緑藻Chlamydomonasを中心にピレノイドの形成機構や二酸化炭素濃縮機構が続々と報告されているが,藻類の多様性を考えれば非常に限定的である.多種多様な光合成生物において,ピレノイドはどのように進化してきたのか?ピレノイドで働く分子機構は普遍的なのか?などの疑問に答えるためには,モデル藻類以外での研究進展も重要である.私はこれまで二次共生により葉緑体を獲得したクロララクニオン藻を用いて研究を進めてきた.本稿では,クロララクニオン藻におけるピレノイドの形態的多様性と進化について紹介する.