PLANT MORPHOLOGY
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特集 I「ピレノイド:植物の相分離オルガネラのカッティング・エッジ」
海洋性珪藻のピレノイド構造とその機能
松井 啓晃松田 祐介
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2023 年 35 巻 1 号 p. 29-33

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抄録

ピレノイドは,葉緑体内の炭酸固定酵素ルビスコを集積した構造であり,炭素固定反応場であることは古くから自明であった.多くの真核藻類で進化し,一部のツノゴケ類にも保存されているピレノイドは基本的に膜構造を持たず,オルガネラとしての地位も曖昧な故にその詳細な機能は長い間解析されていなかった.最近になり,淡水性緑藻クラミドモ ナスのピレノイドは,天然変性タンパク質EPYC1がルビスコ同士を繋ぐことで形成される液液相分離であることが分かっ た.他方,地球のガス交換システムとして膨大な役割を担う海洋光合成もピレノイドをベースとしたシステムに支えられている.こちらは珪藻など,主に二次共生型の紅藻起源葉緑体を主体とし,そのピレノイド形態は緑藻型と似ていない.起源を全く異にする収斂進化の所産であろうこれらピレノイドには,一方で,構造・機能の共通性も昨今見出され始めている.例えば,無機炭素濃縮機構を駆動して無機炭素に高親和性の光合成を行う藻類では共通して,ピレノイド内部にチ ラコイド膜様構造が陥入・貫通している.藻類が石炭紀以降の低CO2 環境に適応する過程で,光利用とCO2 供給を最適 化する必要に迫られた結果,獲得されるべき構造・機能にはそれほど多くの選択肢が無かった可能性も垣間見られる.本稿では,珪藻ピレノイドの側からその共通点を探訪することにより,ピレノイド構造が持つ意味について考察したい.

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© 2023 日本植物形態学会
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