2025 年 37 巻 1 号 p. 9-18
真核細胞を支えるオルガネラは個々の機能を発揮するだけでなく、複数のオルガネラ機能を必要とする制御系を形成し、様々な生物学的プロセスを担う。例えば、多くの代謝系はオルガネラ間で代謝産物を受け渡す必要があるため、時空間的に制御されたオルガネラ間相互作用が必要となる。ペルオキシソームは、脂肪酸代謝や活性酸素種の除去、光呼吸やジャスモン酸の生合成など様々な機能をもち、これらの機能が低下すると、植物では種子の発芽不全、個体の矮性化、生殖異常、胚発生致死などが引き起こされる。光呼吸は、ペルオキシソーム、葉緑体、ミトコンドリアから構成される代謝系で、この3つのオルガネラが光依存的に相互作用し、その時にはペルオキシソームの形態変化や葉緑体との接着面の増加が引き起こされる。また、脂肪性種子の発芽時には、オイルボディに蓄積されたトリアシルグリセロールからリパーゼにより切り出された脂肪酸がペルオキシソームへ輸送され、この場合はペルオキシソームとオイルボディが相互作用する。このオルガネラ間相互作用は膜接触部位を介して行われ、その際にはオルガネラ間で脂質輸送も行われることが明らかになりつつある。本稿では、ペルオキシソームと他のオルガネラの相互作用の分子機構について、主にシロイヌナズナの研究を中心に概説する。