抄録
要旨:古くから保存されてきた変化アサガオと呼ばれるアサガオの突然変異群を花形態形成の新しい研究材料として用いることを提案する。アサガオの花形態変異の多くが生じたのは江戸時代後期の頃で、当時の変異花が彩色木版画として記録されている。これらの記録を基に、後の遺伝学的解析の報告と新たな解剖結果を加味して、変化アサガオの花形態変異を7つのグループに分類した。これらの変異はABCモデルだけでは説明できないと推測される。アサガオの花形態遺伝子は多面発現するものが多く、采咲き・獅子咲きと呼ばれる花は、矮性で、頂芽優勢が抑制され、葉が細くなったりカールする変異を伴う。ABCモデルだけでは説明不能ということは、花形態形成に関して未知の機能を持つ遺伝子が見つかる可能性を示唆するし、多面発現という特徴を利用すれば、花・葉・茎の形態発生に共通する細胞の挙動から基本的な形作りの仕組みを見いだせることが期待できる。