抄録
要旨:シダの配偶体はその形態が単純でありながら、植物の生活環において見られる基本的現象である発芽、細胞の伸長、分裂をともなう成長軸の転換、生殖器官の分化、精子の運動、受精等が細胞レベルで容易に観察できるため古くから形態形成の研究材料としてしばしば用いられてきた。このシダ配偶体を用いて行われた実験の中には日本人によるものが多く見られる。特にそれぞれの現象に関して、その発展のきっかけを作ったものも少なくない。本論では私の周辺で行われた仕事を中心に、これらの業績のいくつかを紹介すると共にその意義について私見を交えて考察してみる。