抄録
要旨:カスパリー線は、その名の由来でもある19世紀のドイツの植物学者Robert Casparyによって存在が世に知らされた。以来、根における物質輸送の要としての機能とその重要性については明らかにされてきた一方、発達の仕組みについては余り調べられておらず今でもよくわかっていない。しかしその発達は植物生理学の視点のみならず植物形態学の視点からも興味深く、特にその芸術的ともいえる網状構造は、植物形態学を志す者にとって挑戦的でさえある。カスパリー線の形づくりについては、まだまとめるというほど十分な知見が蓄積しているとは言えないが、ここでは、これまでの知見を整理しながら、その形が私たちに示す課題を現代の視点で捉え直し、実験形態学的試みを含めて、それに対する様々な角度からの試みを紹介する。