抄録
要旨:高等植物のゲノムは大量の反復配列によって構成されている。これらの反復配列は、個々のゲノムが進化する過程でどのような役割を果たしてきたのか、スイバ(Rumex acetosa)の反復配列の解析から考察してみた。スイバは異質染色質化したY染色体をもち、常染色体とY染色体に多型がみられる。スイバの常染色体に見られる多型は余剰異質染色質分節の付加によってもたらされており、その大きさは余剰異質染色質分節を構成する反復配列のコピー数の増減によって変化していた。Y染色体は性染色体の分化後に、2種類の異なる反復配列が染色体全体に蓄積することによって特殊化してきたことが明らかになった。Y染色体の形態にみられる多型は、反復配列の増減を伴わない染色体の構造変化によってもたらされていた。