2002 年 14 巻 1 号 p. 78-87
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要旨:色素体とミトコンドリアは,バクテリアの細胞内共生により誕生したと考えられており,バクテリアと同様に分裂によって増殖する.しかしながら,その分裂は,自身のDNAの情報ではなく,宿主細胞核DNAの情報によって形成される分裂装置によって行われている.両オルガネラの分裂制御機構を明らかにするために,単細胞紅藻シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon merolae)のオルガネラ分裂同調系を用いて,オルガネラの分裂装置の構成と挙動について解析した.その結果,色素体とミトコンドリアの分裂装置はともによく似た挙動をすることが明らかとなった.色素体の分裂装置についてさらに解析したところ,祖先であるバクテリア由来と思われるFtsZリングと宿主真核細胞由来と考えられる新規の線維束構造を主体としたリング構造(色素体分裂リング)の複合装置であることが判明した.本総説では,我々の研究の結果を中心に,その他の最新の知見を参照して,オルガネラの分裂機構について考察する.