PLANT MORPHOLOGY
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高等植物の葉緑体分裂機構について
- PDringとFtsZringの関係-
黒岩 晴子
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2002 年 14 巻 1 号 p. 68-77

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抄録

要旨:葉緑体は分裂によって増殖しており、分裂機構の解明は重要な課題である。われわれはすでに葉緑体分裂面の包膜の内外に形成される、電子密度の高い二重または三重の構造であるPDringについて報告している。葉緑体はバクテリアの共生によって生じたとされるが、バクテリアの細胞分裂はZringタンパク質(FtsZ)によって引き起こされる事が知られている。この研究では高等植物Pelargonium zonaleを用い、蛍光抗体法と電子顕微鏡法によって、葉緑体の分裂がFtsZringとPDringの関係する複合的な機構によってなされることを示した。分裂に先立って、FtsZタンパク質は葉緑体のストロマ側にリング状に出現する。その後葉緑体のくびれ込みが始まると、FtsZringに接した部分の包膜の内側と外側にPDringが形成される。分裂の間、FtsZringも内側のPDringも脱重合しながら幅を変えずに絞り込み、一方、外側のPDringは次第に幅と厚みを増し、最終的なくびりきりの力を発し、分裂後は消失する。

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© 日本植物形態学会
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